■ 男女における平均寿命差の変動が「喫煙の流行パターン」によって説明できるという研究結果

喫煙習慣は健康にさまざまな悪影響を与えることが知られており、近年では世界的に禁煙の機運が高まっています。そんな中、南デンマーク大学とフローニンゲン大学の研究チームが行った分析により、「1950年〜2015年にかけて発生した平均寿命における男女差の変動が、喫煙の流行パターンによって説明できる」との結果が示されました。

研究チームは、北アメリカ・ヨーロッパ・オセアニアの高所得国に住む50歳〜85歳の人々における平均寿命を、1950年〜2015年までの期間で調査しました。調査の結果、1950年の時点では男性より女性の方が2年半ほど平均寿命が長かったそうですが、1980年ごろになると男女の平均寿命差は4年半に拡大。その後、再び男女の平均寿命差は縮まっていき、2015年になると平均寿命の差はわずか2年にとどまったとのこと。

この男女における平均寿命差の変動について研究チームが分析したところ、「1950年〜2015年にかけて発生した男女の平均寿命差の変動は、全て喫煙習慣の変動によって説明できる」ことが判明しました。

調査対象となったアングロサクソン系の高所得国では、共通した「喫煙の流行パターン」があったことが確認されています。たとえば、1950年代のアメリカ人男性は50%以上が喫煙者でしたが、女性の喫煙者率は24%程度でした。そして、2015年になると男性の喫煙者率は20%を下回りましたが、女性の喫煙者率は12〜15%ほどを維持しており、男女の喫煙者率は時代と共に近づいています。この喫煙の流行パターンにおける男女差が、平均寿命の差として現れたと研究チームは主張しています。

実際に、調査対象の国における「喫煙の流行パターン」を表したのが以下の図。まず1900年ごろに男性の喫煙率が上昇し、10年ほど経過してから女性の喫煙率が上昇。その後、男性の喫煙に関連する死亡者数が増加し、遅れて女性でも喫煙関連の死亡者数が増加するというパターンが見てとれます。また、最終的に男性と女性において喫煙率の低下がみられますが、2000年ごろになると男性の喫煙に関連した死亡者数が緩やかに減少していくのに対し、女性の喫煙に関連した死亡者数は増加し続けています。この喫煙の流行パターンと、男女の平均寿命差が連動していると研究チームは指摘。

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実際に、研究チームが喫煙していない50歳〜85歳の人に限定して平均寿命を計算したところ、1950年〜2015年の期間中、男女の平均寿命差は一貫しておよそ2年でした。これは、2015年の時点における男女の平均寿命差とほぼ同じであり、2015年時点では喫煙習慣の差が平均寿命の差にあまり影響を与えていないことを示しています。

研究チームは、喫煙習慣が明らかに死亡率に影響を与えているにもかかわらず人々が喫煙をやめない理由について、喫煙が人を死亡させるまでに数十年の時間がかかる点を挙げています。もしも喫煙がただちに致死的な病気を発生させるなら、多くの人が喫煙をためらいますが、喫煙がただちに死に結び付かないことにより、多くの人が喫煙しているとのこと。

研究チームが「研究で示されたよいニュース」と述べているのが、「近年では50歳以上の人における、喫煙に関連した死亡者数が大幅に減少している」という点。喫煙する人が全くいなくなったわけではありませんが、少なくとも喫煙が健康によくないという認識はかなり広まっているといえます。

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