「AIで数秒」のはずが…保育所選考、連休返上で作業 さいたま市
毎日新聞2020年2月4日 20時00分(最終更新 2月4日 21時17分)
https://mainichi.jp/articles/20200204/k00/00m/040/176000c

 「丸3日かかっていた作業が数秒で終了する」。そんなうたい文句でさいたま市が導入した、人工知能(AI)を用いて認可保育所への入所者を選考するシステムがトラブルを起こし、職員が休日返上で確認作業に追われていたことが市への取材で判明した。当初は「従来より1週間程度早くできる」としていた選考結果の通知は、例年通り今月10日ごろになる見通し。市は次年度に向けて改善を進める。

 同市は認可保育所などの入所者選考の際に親の勤務状況や世帯構成、親族の介護の有無、きょうだいの状況などの条件を点数化し、それぞれを入所する保育所に割り振る。定員を超える応募があるため、入所が認められない人もいる。
 従来は職員約30人が1人あたり平均約50時間かけて振り分けていたが、システム開発会社が整備したAIによるシステムで2017年に行った実験では作業が数秒で終了。市は20年春の入所者の選考から本格導入することを決め、19年度当初予算に655万円を計上した。
 20年春の入所希望は11月に締め切り、市内の約390施設に対して約9000人の応募があった。市によると、1月7日にシステムを稼働させてその日のうちに振り分けを終える予定だったが、システムが動かないトラブルが発生。開発会社による改修が10日までかかったという。きょうだいで入所を希望する際、どの保育所を優先させるかなどの組み合わせのパターンを細かく設定したことなどが原因とみられている。
 システムによる振り分けは11日に行われ、その日のうちに終わったものの、チェック作業が11〜13日の3連休にずれ込み、各区で休み返上の作業が進められた。
 AIを活用した保育施設への入所者選考はここ数年、全国に広がっている。システムを開発した会社によると、全国で26自治体が利用している。

 今年から本格導入した東京都港区は希望者約2000人を102施設に振り分ける作業を1月中旬から開始。事前準備の終了後、1〜2分で作業が終わった。
 大阪府池田市でもAIを使って数秒で振り分けた後、職員がチェック。例年より3週間早い1月24日に結果を通知できた。「AIによる仕分け後、職員の目でチェックするが、ポイントを押さえてのチェックなので負担が軽い。補助ツールとして有効だ」と話す。
 さいたま市保育課は「今後入所希望者はますます増えると考えられ、AI導入は避けては通れない」との立場だ。20年度分の選考結果通知を終えた後、トラブルの原因を詳しく調べた上で負荷テストなどを行い、改善した上で21年度分以降も同じシステムを使う予定という。【鷲頭彰子】