習近平訪日は難しい状況

 ということは、4月上旬に予定されている習近平主席の来日はかなり苦しい。習主席の来日の前に、中国の事務方の来日があり、実際の調印文書を詰めなければいけないからだ。

 実際、2月中と予定されていた中国外交担当トップの楊潔?(よう・けつち)中国共産党政治局員の日本訪問が延期されていると報じられている。

 4月上旬には、感染者数の増加は鈍化しているとしても、まだ終息宣言はとても出せる状況ではないだろう。ということは、先週の本コラムでも書いたように、習近平主席の訪日は中国の国内事情からかなり難しいと言わざるを得ない。

 もっとも、この話は日本側から持ち出せることではないので、表面上は、習主席の訪日日程は予定通りとされ、直前になって中国側から延期が発表されるだろう。習主席の訪日は、公式には一切決まっていない。国賓として招聘するためには閣議決定が必要であるが、まだ行われていないからだ。

 4月上旬の習近平主席の訪日の次には、7月24日から始まる東京五輪も気になる。さすがに5月に入れば、感染者数の増加は目に見えて沈静化している可能性が高いだろう。ということは、東京五輪はギリギリ大丈夫と筆者は見ている。

 こうした新型肺炎の感染度合いを前提にすると、中国経済への影響はあと3〜6ヵ月続くだろうと考えている。先週の本コラムでも書いたように、新型肺炎が中国のGDPに与える影響はマイナス2%程度だが、3月5日開幕予定の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)で公表される2020年の経済成長率目標は、どうなるのか。

 そもそも、全人代のスケジュール自体も予定通り行えるかどうか危ぶまれている。2月上旬は、全人代に先立って開かれる地方レベルの人民代表大会が開催される予定だったが、それも次々に延期されているのだ。


世界経済、日本経済が受ける打撃

 世界経済の2020年の成長率は3.3%と予測されているが、これは2%台まで落ちるだろう。中国のサプライチェーンが切れる異常事態なので、打撃は深刻だ。これは日本も例外でない。

 筆者はパソコンオタクであり、しばしば秋葉原を徘徊するが、パソコンや電子機器の部品が中国から入ってこないので、いろいろと支障が出始めているようだ。中国からの部品の多くは重要部品でないが、それでも入手できないと、各種の工程で支障が出てくるものだ。

 サプライチェーンは目に見えにくいが、観光客数の減少ははっきりとわかる。筆者は毎週銀座に2回ほど行くが、つい1ヵ月前には中国からの団体客でごった返していたのに、今はまったく人がいない。

 来週17日には、2019年10-12月期GDP速報(1次速報)が公表される。これは、新型肺炎の影響はまったく受けない時期のものだが、10月からの消費増税のために、年率でマイナス4%程度の落ち込みになるだろう。2020年1−3月期GDP速報は5月中旬に発表されるが、消費増税での落ち込みに新型肺炎が追い打ちをかけ、かなりの悪影響が出てくる。

 観光面などでも年率マイナス0.2%程度の落ち込みが加わり、さらにサプライチェーンの切断の影響が加われば、日本経済にはかなりの打撃になるだろう。

 新型肺炎による一時的なビジネス不況に際して、緊急融資や厚めの資金供給を行い、資金繰りの手助けが最低限度必要だろう。それでも、消費増税による景気の落ち込みの後なので、業界によっては厳しい展開になるかもしれない。

 これで世界経済が大恐慌に向かうとは言わないが、日本はすでに消費増税で経済が弱体化していることを考慮し、5月中には2020年度補正予算を出して万全の対応をしなければいけない。


全文はソース元で
2/10(月) 6:31配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200210-00070333-gendaibiz-cn&;p=3