【ニューヨーク=西邨紘子】米ニューヨーク州のジェームズ司法長官は10日、同州に住む個人が簡単に米国に入国しやすくなる制度について連邦政府が利用を認めないのは恣意的で、州の主権侵害にあたるとして、米国土安全保障省(DHS)と米税関・国境警備局(CBP)などを提訴した。州の経済活動を妨げ、公共の安全を脅かす懸念があるとしている。


連邦政府が問題視した制度は「事前入国審査プログラム」。事前に個人情報を登録し審査を受けることにより、実際の入国時の手続きが簡単にすむしくみだ。DHSは今月5日、ニューヨーク州に住む個人による制度の利用更新・新規申請を今後は認めない方針を決めた。これを不服としてニューヨーク州は今回、連邦政府を相手に訴訟に打って出た形だ。

ニューヨーク州とDHSの対立の発端は、2019年12月だ。州が不法滞在移民でも自動車免許証を取得できるようにする法律を施行した際に、州民の滞在資格などに関する一部情報をDHSと共有するのを拒んだ。これに対しDHSは安全性が確保できないとして、ニューヨーク州に限って入国時の新制度を認めない方針を固めた。

背景には、不法滞在移民の取り締まりを強めるトランプ政権が、「聖域都市」として移民保護を政策に掲げるニューヨーク州への批判を強めている事情がある。双方の対立は一段と激しくなりそうだ。

2020/2/11 7:48
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO55497460R10C20A2000000/