https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200219/k10012291831000.html
中国で大勢のウイグル族が不当に拘束されていると国際社会の批判が強まる中、アメリカにあるウイグルの人たちの団体は
収容施設に送られた人たちの状況を記録した内部文書を入手したと発表し、不当な拘束の実態を裏付けるものだとしています。

中国の新疆ウイグル自治区では当局がウイグル族の人たちを収容施設で不当に拘束しているとして国際社会から批判が強まっていて
中国政府は内政干渉だとして反発しています。
これについてアメリカで活動するウイグルの人たちの人権団体は18日、ワシントンで会見し、不当な拘束の実態を裏付ける
中国当局の内部文書を入手したとして分析結果を発表しました。

それによりますと、文書は中国語で書かれた130ページ余りの名簿で、新疆ウイグル自治区南部のカラカシュ県で収容施設に送られた311人について
名前や住所のほか、詳しい家族の情報などが記されています。
収容施設に送られた理由も記され、過激な宗教思想とのつながりや外国を訪れた経験などが挙げられているほか、
「信用ならない」という理由で施設に送られた人もいるということです。

会見に同席した専門家は文書について掲載された人の一部は、実在が確認できたことなどから内容の信ぴょう性は高いとしています。
人権団体のオマル・カナット代表は「この悪夢を終わらせるよう、各国や国連が行動すべきだ」と述べ、国際社会に対し、中国に拘束を停止させるよう、呼びかけました。

■中国「人権問題など全く存在しない」
ウイグル族を当局の施設に不当に拘束していると指摘されていることについて、中国外務省は
「新疆ウイグル自治区でいわゆる人権問題などは全く存在しない。反テロや過激主義への対策を取っているが、その目的はテロリズムが生まれるのを根本から予防するものだ」
などと、中国政府の政策は正当だと繰り返し主張しています。
また、みずからがウイグル族で新疆ウイグル自治区のナンバー2を務めるショハラト・ザキル主席も中国当局の対策は正当だとしたうえで、
「最も発言権があるのは地元の各民族であり、この地域を乱すたくらみは達成できない」などと述べ、この問題への関与を強めるアメリカなどを内政干渉だとして批判しています。

■文書:収容施設に送られたウイグル族の状況を記録
NHKは今回、収容施設に送られたウイグル族の状況を記録したものとされる文書を独自に入手しました。
130ページ余りの文書には新疆ウイグル自治区南部のカラカシュ県の人たち311人について、名前や住所、収容施設に送られた時期や理由、
それに家族の状況や交友関係が細かく記載されています。

収容の理由については過激な宗教思想とのつながりだけでなく、女性がスカーフで顔を隠したり、男性がひげをはやしたりするなど
イスラム教を信仰するウイグル族の慣習そのものが問題視されたケースも目立ちます。
このほか中国国外に親類がいる人やパスポートの発給を申請したことがある人、さらには海外のウェブサイトにアクセスしただけの人も収容の対象とされています。

また、収容された人たちの今後の処遇についての意見も付けられ、「過ちを認め、悔い改める態度を示している」として、自宅に戻ることを認められる人がいる一方で、
収容期間が1年未満だったり、宗教意識が強く、思想面での変化が見られないことなどを理由に「引き続き教育訓練を行う」といった記述も見られます。

中国政府は収容施設について、中国語や技能を学ばせる職業訓練が目的だと主張していますが、文書からは中国当局がウイグルの人たちが
イスラム教への信仰心や民族意識を高めたり、海外の情報に接したりすることに神経をとがらせ、思想教育を通じて締めつけを強めていることがうかがえます。