神戸市中央区の市こども家庭センター(児童相談所)で、真夜中に小学6年の女児が当直業務を請け負うNPO法人の男性職員に追い返されていた問題で、兵庫県内7カ所の児童相談所(児相)のうち、夜間や休日も対面での相談窓口を常設している児相は、神戸、明石市が所管する2カ所に限られることが分かった。残る5カ所は県が所管しており、夜間や休日は無人になる。県の担当者は「夜間の来庁者への対応を考える必要がある」と危機感をにじませる。(伊田雄馬)

 女児は10日午前3時半ごろ、1人で神戸市中央区の同センターを訪れ、インターホン越しに「ママが『出て行け』と言ったから出てきた」と助けを求めたが、担当した男性職員は「警察の方に行ってくれる?」と言って追い返した。女児は約30分後、約300メートル離れた生田署の交番で保護された。

 同センターを所管する神戸市は2004年度まで職員が宿直して対応していたが、行財政改革の一環で05年度から当直業務に民間委託を導入。同NPO法人に委託してきた。

 昨年4月に明石市が開所した明石こどもセンターでは、正規職員を含む3人の職員が泊まり込み、突発的な事案などに対応するという。緊急性がある場合は管理職に電話をする。

 一方、県所管の西宮、川西などの5カ所では閉庁後、相談を受け付ける窓口が、児相の全国共通ダイヤル「189(いちはやく)」など電話回線だけになる。

 県内では18年度、虐待に関する内容だけで4846件の電話を受け、そのうち2割の881件が夜間と休日に寄せられた。

 電話相談員が常駐する県中央こども家庭センター(明石市)の担当者は「『子どもの泣き声が聞こえる』という近隣住民の通報や『家に帰りたくない』という児童からの相談など、電話だけでは緊急度が判断できないものが多い」と明かす。電話の内容は担当エリアの職員に伝達するが、「日中と比べて対応に時間がかかるのは否めない。常に職員を置くのが理想だが…」と戸惑う。

 厚生労働省によると、児相に窓口の対応時間などで統一ルールはないという。県の担当者は「人員が足らず、夜間などの対応は難しい。深夜に児童が家から閉め出された場合も、警察や街の人に見つけて保護してもらうしかない」と話す。

■NPO謝罪「不安な思いさせた」

 当直業務を請け負うNPO法人「社会還元センターグループわ」の大槻隆文理事長(72)らは19日、活動拠点の神戸市シルバーカレッジ(同市北区)で会見し「子どもに不安な思いをさせて申し訳ない」と謝罪した。

 同NPOはカレッジの卒業生を中心に結成され、2005年度から神戸市こども家庭センターでの夜間・休日の当直業務を請け負っている。大槻理事長らによると、男性は70代で約5年前から業務に就いており、「仕事熱心だった」という。

 男性はNPO役員の聞き取りに「インターホンのモニター映像から、実際の学年(小学6年)よりも年上でふざけているように見えた」と話したという。大槻理事長は「二度と同じ対応が起こらないよう、研修を徹底したい」と強調した。

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2020/2/20 06:05神戸新聞NEXT
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