■病院・高齢者施設

 西日本新聞の取材に、複数の病院が「例年以上の感染症対策は取っていない」と答える一方、入院患者との面会を制限する病院も出始めている。

 福岡市の病院(約160床)では1月下旬から、玄関で看護師らが来院者全員に発熱などの症状がないかを確認。手の消毒とマスク着用を呼び掛ける。感染が疑われる患者は専用待合室か車内で待機してもらい、入院患者の面会は原則禁止する。今週には、感染が疑われる患者の増加に備え、屋外に待機用テントも設置した。理事長(71)は「国の対応は生ぬるい。国内でも院内感染が起きており、自衛するしかない」と危機感を強める。

 福岡県田川市の社会保険田川病院は入院患者への面会を原則家族のみに限定。14日以内に中国への渡航歴がある人や、感染の疑いがある人との接触者についても面会を控えるようホームページなどで注意を促す。

 感染すれば重症化の恐れがあるため、高齢者施設の受け止めはより深刻だ。

 特別養護老人ホーム「油山福祉の里」(福岡市城南区)では例年、インフルエンザが流行する1月から3月は個室での面会を禁止し、ロビーのみの面会としていたが、1週間前から全面禁止に。上田正憲介護課長(44)は「福岡市で感染者が出ない方がおかしいと思っていた。マスクやアルコールが手に入らず、3月末まで持つか分からないので心配です」。

 同市は20日、市内の高齢者施設など約3千事業所に対し、不要不急の面会、接触の自粛を要請する通知を出した。やむを得ず面会が必要な場合は面会者の氏名や連絡先などの記録を徹底することを求めている。

 鉄道、バス、タクシーを運行する西日本鉄道(同市)は20日から、路線バスなどの運輸サービス部門でマスクの着用を義務化。JR九州も乗務員にマスクを着用させ、観光列車内や博多駅などの主要駅にアルコール消毒液を設置した。

 福岡市営地下鉄も同日から利用者の多い博多、天神など4駅にアルコール消毒液を設置。18日夜には乗客がマスクを着けずにせきをしていたことを理由に、非常通報ボタンが押されるトラブルが発生した。担当者は「閉鎖された車両内で心配になる気持ちは分かるが、冷静に対応してほしい」と話す。

 福岡−釜山を結ぶJR九州高速船ビートルは、乗客の下船後に船内をアルコールで消毒。韓国では乗船時と下船時、乗客全員に発熱状態を確認するサーモグラフィー検査を実施する。船内で発熱が確認された場合は他の客と3列以上離して着席させるなどの対応を取っている。

■学校

 「ついに福岡でも出たか」。福岡市のある小学校校長は冷静に受け止める。国内で感染者が確認されて以降、学校便りなどで手洗いやマスクの着用を児童に呼び掛けてきた。来月には卒業式を控えるが、現時点では例年通り行うという。

 文部科学省は18日付で各教育委員会に予防に関する対策を通知。発熱など風邪の症状があるときは無理をせずに休み、卒業式や入学試験ではこまめな換気や消毒液の設置を呼び掛ける。

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