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内田樹「専門家不在のコロナウイルス対策会議は日本社会の脆弱性を露呈した」
更新 2020/2/26 07:00 AERA

前略


 だが、社会的共通資本の管理ではめまぐるしく変化することよりも、定常的であることが最優先される。政権交代したら水道が出なくなったとか、株価が下がったので学校や病院が閉じたというようなことがあっては困るからだ。

 感染症対策は専門家が専門的知見に基づいて管理すべき事案であって、政党支持率や景況とは関係がない。

 ということを、どれだけの人が自覚しているだろうか。今回のコロナウイルスの政府の対策会議は1月30日の第1回から2月14日の第9回まで一人の感染症専門家もなしで開かれていた。会議時間は10分から15分。ここで感染症対策についてのテクニカルな議論が深められたと信じる人はいないだろう。

 政治家や官僚や財界人ではなく、まず専門家がハンドルすべき重大事案がこの世には存在する。そのことについての合意が日本社会には存在しない。

※AERA 2020年3月2日号