感染の流行が続く新型コロナウイルス(COVID-19、以下、新型コロナ)だが、次第にその「顔つき」がわかってきた。この記事では、新型コロナと喫煙、そして喫煙所との関係について述べる(2020/03/02時点の情報です)。

■感染リスクと喫煙率の差

 新型コロナの影響は大きくなるばかりだが、少し前に感染リスクと喫煙の関係が世界的なニュースになった。

 このシナリオは、中国で新型コロナの感染者や重篤化の割合、死亡率を男女で比べてみると、男性のほうが3倍以上とかなり多く(※1)、その原因は中国における喫煙率の男女差によるのではないか、というものだ。

 実際、中国の喫煙率は全体で約25%だが、男性の喫煙率は約45%、女性は約2%と男女で大きな差がある(The Tobacco Atlas)。日本の喫煙率も男女差が大きいが(約28%:約9%)、中国人男性の喫煙率は日本人男性と比べてもかなり高い。

 高い発がん性のあるタバコは、呼吸器の機能を弱め、呼吸器の病気も引き起こす。そのため、喫煙者は新型コロナにかかりやすく、肺炎によって重篤化しやすいのではないか、というわけだ。

 だが、そもそもオスは感染症や寄生虫の寄生に脅かされやすい。

 脊椎動物の性成熟したオスは感染症のリスクが高まり、寄生虫に寄生されやすくなることが知られ、これは性選択のコスト負荷のためにオスの抵抗力が落ちるのではないか、と考えられている(※2)。

 このような性差は、喫煙によるウイルス感染リスクの違いにも影響を及ぼす。SARSでは女性のほうが感染リスクが低かったが、これは女性ホルモンのエストロゲンによる保護作用と考えられている(※3)。

 中国の新型コロナ感染の性差には、こうしたことが影響しているのかもしれないが、タバコを吸う女性はエストロゲンが不足することが知られ(※4)、そのため新型コロナでは喫煙女性の感染リスクが高くなっているかもしれない。中国人女性の喫煙率は低いため、感染リスクの男女差が広いが、女性の喫煙率が高い国や地域でどうなるか、まだよくわかっていない。

■タバコとウイルスの受容体

 新型コロナが、どうやってヒトに感染するように変異したのか、過去のSARS(SARSr-CoV)ウイルスの時と同じように、野生動物に宿主がいて、そこからヒトに感染したのではないかと推測されている。その野生動物に候補はいろいろいて、SARSの感染源の生物はコウモリだった。

 新型コロナの遺伝子は、ほぼSARSの遺伝子と同じ(96%)であることがわかっていて、SARSと同様に新型コロナもコウモリが感染源なのではないかと考えられている(※5)。そして、新型コロナもSARSと同じように、ヒトの細胞のACE2という受容体から侵入するようだ。

※中略

■喫煙所がクラスター発生源に

 新型コロナの感染では、クラスターと呼ばれる感染者の集団から玉突き状に感染者を増やすことがある。このクラスターを作らず、早期に発見して拡大させないことが重要だ。

 クラスターが発生しやすい環境は、多数の人間が換気の悪い狭い区域や場所に長時間、集まって濃厚接触をするようなケースだ。コンサートや展示会などのイベント会場や立食パーティなどを行うボールルームなどが該当する。

 政府は、クラスターの発生を防ぐため、換気が悪く人間が密集する空間を避けるように求めているが、喫煙室や喫煙所もクラスターの発生源になる危険性が高い。

 感染予防のためには、入念な手洗いをして手指についたウイルスを体内に入れないことが重要になるが、タバコを吸う行為はまさに感染のリスクを高める。マスクをしながらタバコを吸うことはできないし、タバコは必ず手でつまんで吸い、喫煙者は互いに深く呼吸し合うからだ。

 タバコを吸える場所が少なくなり、喫煙者は喫煙室や喫煙所に集まってくる。そうした喫煙者は、まだタバコの吸えるパチンコ店やスナックなどにも足を運ぶだろう。喫煙室や喫煙所からクラスターが発生すれば、それはすぐに広がっていく危険性がある。

 クラスターの発生を防ぐためには、喫煙室や喫煙所の使用も避けるよう呼びかけるべきだし、施設管理者はその一時的な使用停止も考えるべきだろう。

3/2(月) 14:26
https://news.yahoo.co.jp/byline/ishidamasahiko/20200302-00165682/