東日本大震災の津波被害を教訓に県と浜松市が計画し、2013年4月に着工した遠州灘海岸の防潮堤(同市南区―西区)は7年におよんだ建設工事を経て3月末、完了する。南海トラフ巨大地震に伴う津波被害想定で、県内市町で最も広い14・6平方キロにおよぶとされた宅地浸水面積は「8割減少できる」(県浜松土木事務所)。震災は11日で発生から9年。同市の地域防災は新たな段階に入る。
 防潮堤整備の総事業費は約330億円。同市に拠点を置く住宅メーカー一条工務店グループの寄付金300億円が原資で、市民や地元企業が津波対策事業基金計13億6千万円を寄せた。これに県と市が整備費を拠出。土砂の確保の遅れなどで17年度中の完成予定はずれ込んだが、官民連携で巨大プロジェクトは竣工(しゅんこう)にこぎ着けた。
 県によると、天竜川河口から浜名湖今切口までの東西17・5キロにわたる防潮堤は全国最大規模。同市沿岸部の津波高を9〜14・9メートルと推計した県の第4次地震被害想定(レベル2)に対応するため、堤の高さは海面から13〜15メートルに設定した。
 幅50〜60メートルの堤は、沿岸の保安林を伐採して築いた。土砂とセメントを混ぜたCSGと呼ばれる波の力に対して強固な素材を基礎部分とし、その周囲に盛り土をして台形に仕上げ、上部には散策路を設けた。CSGに使う土砂は、市が天竜区の阿蔵山と北区引佐町の採石場から採取した。
 県の第4次想定では、レベル2津波は地震発生から20分ほどで同市の内陸に流入する。防潮堤整備前の段階では、浸水域は市南部を東西に横切る国道1号の南(海)側を中心に広がっている。

(2020/3/10 07:42)
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