防衛省は、新型コロナウイルスの感染拡大が続いている状況を受け、「病院船」の配備を前向きに検討していることを明かした。河野太郎防衛相も記者会見で、「しっかりと検討したい」と述べた。東日本大震災以降、病院船建造の話は何度も議題には上ってきたが、いよいよ現実味を帯びてきた。

 海軍が病院船を持つことは珍しくない。一番有名なのは米海軍の病院船「マーシー」級で、同型艦を2隻保有する。全長272メートル、満載排水量6万トン超という巨大な船体に、さまざまな症例に対応できる手術室などがある。病床は約1000床で、大きな大学病院が海の上に浮かんでいるイメージだ。

 ロシアは「オビ」級病院船を保有している。全長152メートル、満載排水量は約1万トンと「マーシー」級よりも若干小さいながら、3隻を有し、医療機器の改修を行っている。

 アジア最大の病院船は、中国海軍が保有する「岱山島」だ。ニックネームは「ピースアーク(和平箱舟)」。満載排水量約2万トン。2008年に就役して、世界中をめぐっており、環太平洋合同演習「リムパック2014」にも参加し、「マーシー」とともに大量傷病者の受け入れの訓練を実施した。

 「ピースアーク」の船内は完全な病院だった。生活区画と病院区画は分けられていた。病院区画は地上3階、船内2階の実質4階建て。1階に相当する01甲板は、救急患者を受け入れるフロアになっていた。レントゲン室、CT室があり、その隣が手術室で、ICU(集中治療室)もある。

 このフロアに薬局が設置されており、外来の患者は出口で薬をもらって下船できるなど、考えられた動線となっていた。

 最上階にあたる03甲板には隔離病棟があった。地下2階に相当する2甲板は一般病棟となっていた。感染症に冒された患者は最上階へ集約し、それ以外の病人は01甲板から下の階へと振り分ける、しっかりと考えられた構造・配置となっていた。

 もし、日本が病院船を建造するならば、内閣府の予算で建造し、運用を海上自衛隊が行う方向で落ち着きそうだ。南極観測船「しらせ」は、文部科学省の予算で建造し、海自が運用しており、すでにこうした調達および運用実績を持っている。

 ただし、海自は深刻な人手不足に陥っており、大型の病院船をつくっても、動かせる人員がいないというお寒い状況だ。そこで、海自OBの再雇用案も出されているが、防衛省内部には、「そもそも、必要なのか?」との疑問の声がある。

 やはり、これまで通り、幻と消えてしまうのだろうか。

米海軍の病院船「マーシー」級
https://www.zakzak.co.jp/images/news/200313/dom2003130003-p1.jpg

中国海軍の病院船「岱山島」の病室
https://www.zakzak.co.jp/images/news/200313/dom2003130003-p2.jpg

https://www.zakzak.co.jp/soc/news/200313/dom2003130003-n1.html