https://www.swissinfo.ch/jpn/business/covid-19-_%E6%96%B0%E5%9E%8B%E3%82%B3%E3%83%AD%E3%83%8A%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%81%AE%E3%83%AF%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%B3%E9%96%8B%E7%99%BA-%E8%A3%BD%E8%96%AC%E5%A4%A7%E6%89%8B%E3%81%8C%E6%B6%88%E6%A5%B5%E7%9A%84%E3%81%AA%E7%90%86%E7%94%B1/45605794

Covid-19
新型コロナウイルスのワクチン開発 製薬大手が消極的な理由

Jessica Davis Plüss
このコンテンツは2020/03/10 8:30に配信されました2020-03-10 08:30


新型コロナウイルス(Covid-19)を撲滅するには、製薬企業の取り組みがカギを握る。しかしスイス企業を含む製薬大手は新興感染症よりも、がんなど儲けが高い分野に投資を集中させている。こうした企業判断が感染症との戦いを一層厳しくしている。

スイスは医薬・バイオテクノロジー産業の中心地他のサイトへだ。しかし世界で猛威を振るう新型コロナウイルスに関しては、スイス企業の取り組みは乏しい。

新型コロナウイルス感染症に予防効果があるワクチンや治療薬の開発者名が記載されている世界保健機関(WHO)のリスト他のサイトへに、スイス企業の名前はない。感染はこれまで80カ国以上に拡大し、感染者数は10万人に達した。だが新型コロナウイルスに関する主要研究開発計画を発表したスイス拠点の製薬会社は1社もない。


製薬産業から顧みられない病気の治療法開発に取り組むNPO「顧みられない病気の新薬開発イニシアティブ(DnDi他のサイトへ)」のベルナール・ペクール理事長は、スイス製薬企業が全般的に無関心なことに特に驚いた様子はない。

「製薬大手の多くが感染症分野に背を向けている。これは憂慮すべき事態だ。なぜなら(製薬企業がこうした態度を取っているからといって)感染症がもう起きないとは考えにくい。これは新型コロナウイルスの大流行を見ても分かる」と、同氏は団体の拠点があるジュネーブで語った。
DnDiは2003年の設立以降、あまり顧みられない患者や病気の治療への投資促進活動他のサイトへを第一線で行ってきた。市場ベースの研究開発モデルに代わる代替案を推進していく中で、アフリカ睡眠病(ヒトアフリカトリパノソーマ症)など八つの治療法・治療薬の開発に成功した。アフリカ睡眠病はサハラ以南のアフリカ地域を中心とした病気で、数百万人が感染のリスクにさらされている。

だが製薬会社ががん研究や脊髄性筋萎縮症(SMA)などの難病分野に何十億ドルもの資金をつぎ込んでいることに比べれば、DnDiの取り組みは微々たるものに過ぎない。製薬会社はこうした巨額投資で画期的な遺伝子解明を目指す一方、HIV、マラリア、結核を除く新興感染症への投資を減らした。

途上国における世界の主要製薬企業の活動を評価した「医薬品アクセスインデックス(ATMインデックス)他のサイトへ」の最新版によると、製薬最大手20社の研究開発は約半数ががん分野を対象にしている。一方、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)や重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)などのコロナウイルス感染症に関するプロジェクトは、この調査結果が発表された時点では皆無だった。

ノバルティスは14年、長年にわたり収益赤字だったワクチン事業を英製薬企業グラクソ・スミスクライン(GSK)に売却した他のサイトへ。そのため同社はすでにウイルス研究の継続に必要な専門知識を持ち合わせておらず、抗ウイルス剤や診断法についての研究も行われていない。ワクチン事業で企業統合が行われた結果、約450億ドル(約4兆6千万円)規模とされる世界のワクチン市場のうち8割を4大企業が占める。

「企業は利益が見込める市場に集中する。がん関連市場は以前から収益性が非常に高い。今では希少疾患(米政府がまれな疾患として分類する病気)でさえも、収益性の高さから市場開拓が進んでいる。非常に高額な価格で(治療薬を)提供できるためだ」とペクール氏は語る。
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