新型コロナウイルスの感染防止策として、手洗いうがいの徹底や、マスクの着用を心がけている人は多いだろう。 

一方で、「無意識に顔を触ること」に注意している人はどれくらいいるだろうか? 顔を触ることによる影響や、そもそもなぜ触ってしまうのかなど、米紙「ロサンゼルス・タイムズ」がレポートしている。

どうしても顔を触ってしまう私たち

「鼻をほじると汚い」と思われるのと同様に、これからは、鼻を掻いたり口を触ったり目をこすったりする行為も「気持ち悪い」となるかもしれない。

ほんのわずかなウイルスでも手につけば、口や鼻などの粘膜を通じて、体内にあっさりと忍びこむからだ。

侵入したウイルスは身体のいたるところで増殖し、体をむしばんでいく。たった一度手を洗わずに顔に触れただけで、肺や腎臓を破壊する病原体が体内に侵入し、敗血性ショックや内臓疾患、呼吸困難に陥るような症状にまで発展することもあるのだ。

それでもなお、私たちは顔に触れることをなかなかやめられない。

そもそも、この行為はほぼ無意識におこなっていること。ある研究では、医学生が授業中に「1時間に平均23回も顔に触れていた」というデータが発表されている。

「手で顔を触れることは人間の自然な習性なんです」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)で感染症を専門とするオットー・ヤン博士は語る。

顔を触る意外な理由

そもそも、人はなぜ顔を触るのだろうか?

「PLOS ONE」(オープンアクセスの査読つき科学雑誌)の記事によると、目標を達成できなかったり、現状に不満があったりするときに、人間は顔を触る傾向があるという。ネガティブな思考に陥ると、手が顔を目がけて動いてしまうのだ。

普段顔に触れるのは、顔がかゆいときや髪をかきわけるときなどに限定されると思いがちだが、「不安や不満を抱えているとき、人は顔を触れることでストレスを軽減させている」のだという。

また研究によれば、顔を触る行為には集中力を持続させる効果もあるようだ。

とある実験で被験者に難しい課題を与え、それを解こうとする際、集中させないようにさまざまな妨害行った。すると、被験者が課題に集中しようとするほど、顔に触れる回数が飛躍的に上がった、という結果が出ている

スマホも壁も洋服も…

残念なことに、普段の生活で我々が触れるものはだいたい不衛生だ。

その最たる例が、人類最愛のスマートフォンである。手を洗った次の瞬間にはスマホを手にしていることも多々あるだろう。

微生物学に関する研究論文「Iranian Journal of Microbiology」によると、医療従事者が持つスマホの93%に病原体の存在が確認されているという。さらに、医療従事者以外でも53%の人間のスマホには病原体がいることがわかっている。

「スマホはメッセージを送るだけでなく、病原体をうつす媒体にもなっている」 と同論文にはある。

また、多くの人々が他人のくしゃみや咳を警戒しているが、そもそも自分の手から病原体が体内にあっさり侵入することも証明されている。さらに病原体によっては、固い物質の表面上で何日も生きられることが確認されている。
医学誌「Journal of Hospital Infection」に掲載された研究論文によると、インフルエンザウイルス感染者の病室内のパソコンマウスやベッドの手すり、壁、ソファー、洋服など、いたる場所で病原体が確認されたという。

3/18(水) 18:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200318-00000003-courrier-int