[ミラノ 18日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大によるイタリア国内の死者数が公式統計で2500人を超える一方、イタリアの高齢者介護施設では1日数十人がウィルス感染の検査を受けずに死亡している。新型コロナによる実際の死者数は公式発表の数を上回っている可能性をうかがわせる。

イタリアでは、新型コロナウイルスの陽性確認件数が公式データで3万人近くに達しており、最初に感染が生じた中国を別とすれば世界最多となっている。

だが検査については厳しい基準があり、いわゆる「スワブ法」による検査を受けられるのは、通常、入院した重症患者のみである。

詳細なデータは入手できないものの、当局者、看護師、親族らによれば、新型コロナウイルスが確認されて以来、感染拡大が最も深刻なイタリア北部の高齢者介護施設では死者数が急増している。だが、その状況は新型コロナウイルス関連の統計には反映されていない。

「亡くなった場所が自宅や高齢者介護施設で、ウィルス感染の検査を受けていないために、感染による死亡と見なされていない例がかなりの数に上っている」とベルガモ市長のジョルジオ・ゴリ氏は言う。

<死者数が「不自然な」増加>

ゴリ市長によれば、ベルガモでは今年3月の最初の2週間で164人の死者が発生し、そのうち31人が新型コロナウィルスによるものとされている。これに対して、昨年同時期の死者数は56人だ。

新型コロナウィルスによる31人を足したとしても、昨年に比べて77人も死者が増えた計算になる。ウィルスによる実際の死者は公式に記録されているよりもかなり多い可能性を示唆している。

イタリア北部の街クレモナにある460人収容の高齢者介護施設「クレモナ・ソリダーレ」のエミリオ・タンツィ所長は、高齢者介護施設は、高齢者を中心に犠牲を生んでいる今回の危機の最前線に置かれているが、それにもかかわらず十分な支援が得られていない、と話す。

タンツィ氏は、イタリア国内で感染拡大が加速しはじめた3月2日頃から、介護施設での死亡がかなりの幅で「不自然に」増えていたという。

だが、これが新型コロナウィルスによる疾病「COVID−19」によるものかどうかを知る方法はなかった、と同氏は言う。

タンツィ氏は全体の数字については伏せているが、同氏の施設では、先週のある1日だけでも、新型コロナウィルスに関連する症状である呼吸困難を伴う患者18人が亡くなったという。

「検査が行われていないから、新型コロナウィルスによる死者かどうかは分からない」と彼は言う。「しかし確かに、高熱と呼吸困難は見られた」

「もし新型コロナだと分かっていれば、こうした患者を適切に隔離して、蔓延を防ぐことができただろう」

<介護施設は「見捨てられた」>

2月21日に北部イタリアで初の新型コロナウィルス感染が確認された直後から、高齢者介護施設では来訪を禁止した。この疾病に対して最も脆弱とみられる高齢の入居者への感染リスクを抑制するためだ。

クレモナ県の高齢者介護施設30カ所をまとめる協会ARSACのウォルター・モンティニ会長は、36人収容の小規模介護施設で1日7人の死者が出たと話す。

「明らかに死亡例が増えている。クレモナの地元紙を見るだけで分かる。通常、訃報欄は1ページしかない。今日は5ページもある」

モンティニ会長は3月2日、介護スタッフ向けにマスクを供給するよう要請を行ったが、品薄の状況を考慮し、病院のニーズの方が高いと判断されてしまった。モンティニ会長は、介護スタッフの検査も必要だと話すが、実際には行われていないという。

現地の保健当局は検査・治療に関する政府の指令を受けていると述べており、それによれば、入院が指示されるのは「呼吸器系の重い症状」のある患者に限られてるという。

いわゆる「レジデンツェ・サニタリエ・アシステンツィアリ(長期介護ホーム)」には、患者の治療を行うことのできる有資格医療スタッフが配置されているという。



2020年3月21日 / 08:20 全文はソース元で
https://jp.reuters.com/article/health-coronavirus-italy-homes-idJPKBN21619R