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2020/03/22(日) 12:30:05.30ID:cA44mAMv9【写真】和解後の会見でメッセージを伝える和田さん
日本労働弁護団の幹事長を務めたこともある棗一郎弁護士をしても、その事件はまったくの手探りだった。
原告はオリックスに30年近く勤める聾唖(ろうあ)者の和田明子さん(48)。2017年3月、職場での嫌がらせなどを訴え、東京地裁に提訴した。
「これまで泣き寝入りをしたり、やめていったりした多くの聴覚障害者を知っている。絶対にやらないといけないと思って、勇気を出して提訴しました」(和田さん)
今年2月、無事和解が成立。3月に記者発表した。会見の中では、先天性の聴覚障害者が裁判をするうえでの課題も語られた。歴史的にまれなプロジェクトを振り返りたい。
●筆談なら「コミュニケーションできる」は本当?
棗弁護士は語る。
「筆談なら大丈夫と思うかもしれませんが、日本語ができるからといって、文章でコミュニケーションできるかというと容易ではない。日本語と手話はまったく違う言語という前提がないとうまくいかないと思いました」
そんな和田さんをサポートしたのが、自身も生まれつき耳が聞こえない田門浩弁護士だ。聴覚障害のある弁護士は、日本でもまだ少ない。
「耳が聞こえない人の中には、新聞の内容もなかなか把握できない人もいる。裁判は文書で戦いますが、きちんと内容を把握できないことが多い。それを私たちが手話で説明し、理解してもらうこともあります」
手話には「てにをは」(助詞)がなく、指の向きなどで主語や目的語を表現する。また同じ意味でも、手を動かすスピードやちょっとした形の違いで微妙なニュアンスを伝えるという。語彙の違いもあり、先天性の聴覚障害者は、健聴者にとっての「外国語」で育ってきたと言えるのかもしれない。
実際、和田さんが裁判に際して提出した陳述書には、次のような記述があった。
「書かれた文章については、健聴者に比べると読み取りが難しく、長い文章、複雑な文章、主語がない文章などは正確に理解することができません」
「考え事をするとき、頭の中で手話をして考えています。健聴者であれば、音や文字などの言語によって考えるのでしょうが、私は、手話、つまり手の形や動きのイメージで考えています。たとえていうなら、(略)チャップリンの無声映画を見ている状態で考えているのです」
●法廷には大勢の手話通訳者
裁判でコミュニケーションの難しさが顕著に現れたのは、2019年10月7日にあった和田さんの本人尋問だろう。
法廷の柵の内側には実に7人もの手話通訳者。うち3人は裁判所が手配しており、「令和」の元号発表を手話で伝えた江原こう平さんの名前もあった。
▼和田さんに手話を伝える、▼手話を日本語にする、▼待機、を順番に回す。尋問調書には、手話は載らず、日本語の訳だけが残されるというわけだ。
残る4人のうち2人は田門弁護士ら原告席の前に、ほかの2人は傍聴席を向いて座った。傍聴人の中には、補聴器をつけている人もいた。
尋問では、手話が見えるように証言台が外された。和田さんが「良心に従って真実を述べる」と手話で宣誓し、それを通訳者が日本語になおしてスタート。通訳込みのため、通常の1.5倍ほどの時間が設定されている。
●弁護士1年目「初めての尋問」に挑む
和田さん側で質問(主尋問)を担当したのは、当時1年目だった松田崚弁護士。松田弁護士も耳が聴こえず、手話で和田さんに問いかけた。実はこれが初めての証人(本人)尋問だったという。
傍聴していて気になったのは、春名茂裁判長が、和田さんに対して「少し待ってもらえますか」と度々声をかけていたことだ(和田さんには通訳を通して、手話で伝えられる)。
裁判所は和田さんの手話ではなく、手話通訳の声によって、内容を把握している。しかし、和田さんには手話通訳の声は聞こえない。加えて、松田弁護士は手話で尋ねている。通訳がスピードについていけなくなることが懸念されたようだ。
とはいえ、準備もよくできていたのだろう、松田弁護士が「お互いに手話でスムーズにやりとりができた」と振り返るように、主尋問は概ね順調に進行した。
●反対尋問で連発された「意味がわからない」
より課題が露呈したのは、オリックス側からの質問(反対尋問)が始まってからだ。
全文はソース元で
3/22(日) 10:37配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200322-00010951-bengocom-soci