新型コロナウイルスの感染拡大で、マスクやトイレットペーパー、ティッシュなどがドラッグストアの店頭から姿を消したが、そんなドラッグストア業界は勢力図が目まぐるしく変わっている。果たして、今後どのチェーンが覇権争いに勝利するのか−−。ジャーナリストの有森隆氏がレポートする。

“コロナショック”で日本中が混乱する今、ドラッグストアの店員を名乗る人物がツイッターに悲痛な叫びを投稿した。マスクなどを購入できなかった消費者から苦情やイライラを毎日ぶつけられ、

 〈すみません、申し訳ございませんばかりで疲れました〉

 〈今まで笑顔だったお客様が、全員鬼に見えます〉

 〈コロナよりも怖いのは人間だと思います〉

 と綴った。新型コロナは、ドラッグストアの店先を修羅場に変えてしまった。

 そんなドラッグストア業界は、いま戦国時代を迎えている。業界トップのウエルシアホールディングス(HD)の2月の既存店売上高は、前年同期比20.6%増、客数は22.8%増だった。新型コロナウイルスの影響で、マスクをはじめ医薬品や日用品などの売れ行きが好調だった。

 消費税増税と新型コロナのダブルパンチで大苦戦に陥った小売業の中で、ドラッグストア業界は“マスク特需”に見舞われた。3月以降も良好なトレンドを維持し、業績の上振れが期待できる。

 一方、業界5位のマツモトキヨシホールディングス(HD)と同7位のココカラファインは、2021年10月に経営統合する。売上高1兆円強、店舗数3100弱というメガストアが誕生し、一躍、業界トップに躍り出ることになるのだ。


 「業界の雄」と呼ばれて久しいマツキヨは2016年、22年ぶりに売上高首位の座を明け渡し、新たにトップに立ったのがウエルシアHDだった。だが、マツキヨはココカラとの経営統合をテコに、トップに返り咲く。

 そこでウエルシアはどう出るのか−−。ウエルシアの親会社であるイオンともども、その動向に関心が集まっている。

 ◆イオン会長がウエルシア創業者から託された「遺言」

 「ウエルシアを日本一のドラッグストアにしてください」

 イオンの岡田元也(当時社長で現会長)が、ウエルシアの創業者、鈴木孝之から受け取った「遺言」である。

 岡田が国立がん研究センター中央病院を訪れたのは、2014年2月21日のことだった。医師に余命数か月と宣告されていた鈴木は、岡田を招き、こう語りかけた。「俺はもう後がない。ウエルシアを守ってくれないか」。岡田は言葉少なに「わかりました」と応じたという。

 鈴木は抗がん剤治療を止めるよう医師に伝え、3月13日に息を引き取った。享年76歳。

 鈴木は明治薬科大学卒業後の1965年、埼玉県春日部市に鈴木薬局を開業。薬剤師だったことから、当時としては珍しい「調剤併設の薬局」だった。グリーンクロスと改組したのち、医薬分業の時代がやって来ることを見越し、調剤併設店を拡大する。

その後、M&A(合併・買収)を繰り返し業容を拡大。2008年、持ち株会社グローウエルホールディングス(現・ウエルシアHD)を設立し、会長に収まった。そして、調剤薬局を併設するドラッグストアとして圧倒的な地位を築いたのである。

 イオンの岡田にとって、鈴木の申し出は渡りに船だった。イオンは旧ジャスコ時代から「ゆるやかな連帯」によるグループ経営を目指し、各地のドラックストアに1〜3割程度出資していた。

 2001年には、ウエルシアやツルハホールディングス(HD)など出資先を束ねる「イオン・ウエルシア・ストアーズ」(現ハピコム)を結成し、医薬品など自主企画商品の共通化に取り組んできた。

 「鈴木さんの日本一になるという夢を、是非とも実現したい」。岡田はこう宣言し、ウエルシアHDをイオンの連結子会社に組み入れた。



全文はソース元で
2020.3.23
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