もう1ヵ月以上遅れている
 安倍首相は28日に記者会見し、「緊急経済対策の策定と、その実行のための補正予算案の編成を、このあと指示する。今まさにスピードが求められており、10日程度のうちに取りまとめて速やかに国会に提出したい」と述べ、今後10日程度でリーマンショックのときを上回る規模の緊急経済対策を策定し、新年度の補正予算案を編成する考えを示した。

 筆者の結論を言おう。これまでの本コラムを読んでもらえればわかると思うが、「あまりに遅すぎで、シャビー(みすぼらしい)」だ。

 まず「遅すぎ」からいこう。28日に記者会見が行われたのは、27日に2020年度予算が成立したからだ。この段階で、財務省の手順に従ってしまっており、「遅すぎる」のだ。

 筆者はこれまでの本コラムでも、3月中の2020年度予算の「修正」を主張してきた。2020年度予算を成立させてから「補正」で対応すると、1ヵ月以上も遅れるのだ。

 また、中身に関わる話でもあるが、安倍首相は、現金給付の規模や対象について「リーマンショックの時の経験や効果などを考えれば、ターゲットをある程度おいて、思い切った給付を行っていくべきだと考えている」と述べ、すべての国民に一律の現金給付には慎重な考えを示した。

 これは、所得制限したうえで現金給付をするつもりなのだろう。今回のような大きな経済危機の時には、何よりスピードが優先される。なので先進国では、まず現金給付をする。具体的には、筆者が本コラムで書いてきたような政府振出小切手を国民に配るというやり方だ。

 所得制限とは、通常は配布前に所得制限をかけて行うものだ。具体的には、所得に応じて給付金を配布するという方法になる。しかし、実際に行うにはかなりの時間を要する。そこで、政府振出小切手を一律に配布するという方法がとられる。この方式は、アメリカなら2週間程度で実施可能だ。

やっぱり財務省が障害か
 「高額所得者に対しても一律に給付金を出せば批判される」と、財務省は国会議員を脅す。実際に、今回もそのようなことがあったようだ。しかし、その脅しは簡単に切り返すことができる。

 というのは、アメリカでも同じであるが、税法の非課税措置を手当しなければ(つまり何もしなければ)、給付金は税法上「一時所得」に該当するため、高額所得者は限界税率が高く、それなりの調整がなされるのだ。

 こうした危機に所得制限を示唆するとは、日本の国会議員はコロっと財務省に騙されてしまったようだ。

 ついでに言っておくが、日本の現金給付は政府振出小切手を使っていないので、とても2週間ではできない。

 リーマンショック時に給付された定額給付金は、いわゆる地方事務である。地方自治体から国民に、定額給付金の「申請書」が送られる。国民はそれに銀行口座などを記載し、本人確認書類などとともに地方自治体に「申請」する。受け取った地方自治体は、本人確認をして、銀行口座に振り込む。この間、1、2ヵ月を要する。

 一方、政府振出小切手では、本人のところに小切手が届く。本人はそれに署名して、銀行に持ち込む。銀行が本人確認して現金が付与される。この方式のほうが簡便なので、2週間くらいで実施できる。

官邸が財務省にやられている
 次に、対策そのものの規模も情けないほどシャビーだ。一応、「リーマンショックの際を上回る規模」というが、これは事業規模の話だ。リーマンショック時に政府が56兆円の事業規模で対策したのは事実だが、真水ベースだと15兆円程度だった。

 経済対策には、大別すれば(1)公共事業、(2)減税・給付金、(3)融資・保証がある。「真水」とは、(1)のうち用地取得費(事業費の2割程度)を除いた部分、(2)は全額、(3)は含めないで、(1)(2)を合算したものを指すことが多い。

 実際の政策としては、(2)でも消費に回らないと短期的にはGDP創出につながらないし、(3)がないと企業倒産に繋がり、雇用の喪失を通じてGDPへの悪影響が出る。

 その意味では、全ての政策が相まって重要なのだが、「真水」の考え方は、「マクロ経済政策による有効需要増のGDPに対する比率」で表すことができる。そのため、経済ショックで需給ギャップがGDPの一定割合に生じた際、どの程度まで穴埋めできるかが簡単にわかるので、景気の先行きを占う上で有効である。


全文はソース元で
3/30(月) 6:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200330-00071469-gendaibiz-pol
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