新型コロナウイルスの感染拡大封じ込めのため国内の封鎖命令が出されたインドで、
ウイルスの形状を模したヘルメットをかぶって勤務する警察官がいる。
目に見えないウイルスの不気味さや危険性を、人々に分かりやすく伝え、警戒心を呼び起こすことが狙いだ。

写真=封鎖命令の出たインドでウイルスを模したヘルメットをかぶり市民に注意喚起する警官
https://www.cnn.co.jp/storage/2020/03/31/7385b01a0bda0cfa3be6b2dcaa398724/t/768/432/d/coronavirus-helmet-super-169.jpeg

南部の都市チェンナイで勤務する警察官のラジェシュ・バブさんは、
検問所で歩行者や車両を停止させる際、フルフェイス型の特性ヘルメットを装着する。

赤く塗られたヘルメットには、先端が丸くなった棒状の突起が何本も放射状に伸びる形でくっついている。
ちょうど首から上が、新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスの顕微鏡画像になった格好だ。

写真=検問所で通行人に声掛けをする警察官のラジェシュ・バブさん
https://www.cnn.co.jp/storage/2020/03/31/7bce3ab2a6747498d302ebff925adec3/coronavirus-helmet-exlarge-169.jpeg

奇抜なデザインのこのヘルメットを制作したのはチェンナイを拠点に活動するアーティストのB・ゴウサムさん。
パンデミック(世界的な流行)の状況下にもかかわらず人々の間に危機感や感染予防への意識が足りていないと思い、
特性ヘルメットの制作を思い立ったという。

「政府が外出禁止を命じても、人々はまだそのへんをうろついている。
ウイルスから身を守る適切な措置を講じることもなく、マスクもつけていない」(ゴウサムさん)

人々が感染を軽く扱うのはウイルスが目に見えないからだと考えたゴウサムさん。
迫りくるウイルスの姿を実際に見て、怖がってもらうための作品を作ることにした。

ウイルス型のヘルメットを作ろうと決めたのはいいが、どの店も営業を停止していたため、
有り合わせの材料に頼るしかなかった。
ウイルスのとげは新聞紙とティッシュペーパーを使って仕上げたものだ。

完成したヘルメットを持って近所の警察署へ行くと、
ヘルメットを受け取ったバブさんはこのアイディアをいたく気に入った。

写真=ヘルメットの中から厳しい視線を送り、ウイルスの脅威を伝える
https://www.cnn.co.jp/storage/2020/03/31/59f45dd02442a67bb99bed6c85d3a6d8/coronavirus-helmet-exlarge-169.jpeg

検問所に立つバブさんはヘルメットをかぶり、通行する車やオートバイに乗った人たちに声をかける。
とりわけマスクを着けていない人に対し、他人との距離をとることやマスク、手袋などの医療用品の必要性について説明する。

そのうえで不要不急の外出をしないよう強く求める。
ウイルスになりきり、「外に出れば、私が(体内に)入り込む」と警告まで与える念の入れようだ。

ゴウサムさんによるとヘルメットへの反応は上々で、多くの通行人がバブさんの情報に感謝し、自宅待機に同意するという。
米ジョンズ・ホプキンス大学のデータが示すインドでの新型コロナウイルスの感染者はここまで1024人。死者は27人となっている。

https://www.cnn.co.jp/fringe/35151599.html