「この子の発作が止まるならば、たとえ逮捕されても構わない。『医療大麻』のことを知ったときは、このように考えたほどです」。

こう語るのは、「難治性小児てんかん」と診断されたソウタくん(仮名・2歳)の父親ヨシノブさん(=仮名・40代、大阪府在住)だ。

医療目的のために大麻を使うことは「大麻取締法」で禁じられている。最終的に、ソウタくんの両親がたどり着いたのは、大麻の成分である「CBD(カンナビジオール)」が含まれる「合法」の「CBDオイル」だった。

両親は追い詰められていた日々のことを語ってくれた。(編集部・吉田緑)

●多いときは80回の発作…両親ともに疲弊

ソウタくんは生後すぐに突然意識を失い、口を固く食いしばり、呼吸が止まる強直(きょうちょく)発作を起こし、NICUに4カ月間入院。両親は毎日病院に足を運んだ。発作の影響でミルクを飲むこともできず、ソウタくんは鼻からチューブを入れてミルクを摂取した。

抗てんかん薬の効果はなく、ソウタくんは発作がおさまらないまま退院となった。

発作は1日に20から30回、多いときは80回もあった。ソウタくんは泣くことも笑うこともなく、ミルクを飲むこともできなかった。生後から半年間、発作がない日は1日たりともなかった。外出もままならず、両親は心身ともに疲弊し、追い詰められていた。

●情報収集の末、たどり着いた「大麻」「CBD」

「なんとかこの子を救いたい。抗てんかん薬以外の治療法はないだろうか」。その一心で、父親のヨシノブさんは貪るようにインターネットで情報を集めた。

目に飛びこんできたのは、海外で医療大麻が難治性小児てんかんに効果があるというネットニュース。そして、大麻の成分であるCBDを使って発作がおさまった少女のドキュメンタリー番組『WEED』(CNNで放送)だった。

大麻には100種類以上の固有の薬効成分が含まれており、この成分を総称して「カンナビノイド」という。主成分のカンナビノイドは「THC(テトラヒドロカンナビノール)」と「CBD」だ。

「THC」は多幸感や鎮痛作用をもたらす成分。一方、「CBD」は「ハイ」になるなどの精神活性作用はなく、研究によって「難治性小児てんかん」などの病気に効果があることが明らかにされている。

●「大麻を使えば逮捕されるのでは」

ヨシノブさんは意を決して「CBDを使ってみないか」とソウタくんの母親エリカさん(仮名・30代)に提案した。

しかし、CBDが大麻の成分だと知ったエリカさんは「大麻を使えば逮捕されるのでは」「本当に大丈夫なのか」と動揺した。

大麻は「違法な薬物」として知られている。使用の罪はないが、所持していれば逮捕されることになる。「危険」「有害」などのイメージを抱く人も少なくないだろう。実際に、厚生労働省のポスターには「ストップ大麻!大麻の使用は有害です!」などと書かれている。ワイドショーなどでも大麻は「悪」として報じられている。

ヨシノブさんはもともと何事にも慎重な性格。そのため、あらゆることについて徹底的に調べないと気が済まないタイプだった。そのヨシノブさんが「大麻」と言っている。それでも、エリカさんはすぐに受け入れることはできず、「考えさせて」と返事を保留した。

●医師に相談し、「CBDオイル」のモニターに

ヨシノブさんがみつけた医療大麻やCBDに関する情報の多くは海外のものだった。エリカさんは日本国内で使っている症例がないかを調べ始めた。しかし、情報は少なく、途方に暮れた。

そんなとき、医療大麻の情報を発信し続けている団体「GREEN ZONE JAPAN」の正高佑志医師(代表理事)が「日本臨床カンナビノイド学会」の学術大会でおこなった講演の動画(「カンナビノイド医療の可能性」)をみつけた。

これを見たエリカさんは「(CBDは)いいかもしれない」と考えるようになった。そこで、ヨシノブさんと話し合い、ソウタくんの治療のためにペースト状の「CBDペースト」を使うことを決意。日本の通販サイトで購入した。

ところが、効果はまったくなかった。そこで、藁をも掴む思いで正高医師に相談。これまで使っていた「CBDペースト」よりもCBDの濃度が高い「CBDオイル」があることが分かり、モニターとして使うことになった。

●症状は劇的に回復…懸念されるのは「経済的な負担」

全文はソース元で
4/5(日) 9:39配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200405-00010997-bengocom-soci
https://lpt.c.yimg.jp/amd/20200405-00010997-bengocom-000-view.jpg