安倍首相「緊急事態宣言」をする意向

安倍首相が緊急事態宣言を出す意向を固めた。

文字通り、すでに緊急事態であり、いまのタイミングまでずれ込んだことは理解に苦しむ。

安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、緊急事態宣言に踏み切る意向を固めた。

諮問委員会に諮り、専門家の意見を仰いだうえで、近く宣言を出す方針だ。

緊急事態宣言の規定がある新型インフルエンザ等特別措置法の対象に、新型コロナを加える改正法が3月に国会で成立し、施行されていた。

同法に基づく実際の宣言は初めて。

緊急事態宣言は、政府対策本部の本部長を務める首相が、都道府県を単位とする区域や実施期間などを示して出すと、特措法で定められている。

該当地域の都道府県知事が、感染拡大防止などで必要と判断すれば、住民への不要不急の外出の自粛要請や、施設の使用停止、イベントの開催制限の要請・指示などの措置をとることができる。

使用制限を要請できる施設には、学校や劇場、百貨店、体育館、ホテルなどがあげられる。

スーパーマーケットも含まれるが、食品、医薬品、衛生用品、燃料など厚生労働相が定める生活必需品の売り場は営業を続けられる。

こうした要請や指示に違反しても罰則はない。

外出自粛に罰則を設けることなど海外で行われている「ロックダウン」(都市封鎖)と、緊急事態宣言を同一視する見方がネット上などであるが、同じではない。

特措法には、強制的に外出を禁じる規定はなく、鉄道やバスなどの公共交通機関の運行をとめて、封鎖する規定もない。

首相みずから都市封鎖は「できない」とする。

出典:首相、緊急事態宣言へ意向を固める 特措法に基づき初 朝日新聞 4月6日
緊急事態宣言のなかで大事な点は、海外のように外出自粛に罰則はないため、仕事にも行けること。

端的に言えば、今までと大きな違いはなく、また人々の心に訴えかける「お願い」を強くしたものということだ。 

人々の行動をこれでは抑え込むことは難しいだろう。

相変わらずの「補償なき緊急事態宣言」では市民は働きに出るしかない
まず不要不急の外出は控えてほしいことは言うまでもないが、外出をしなければならない人々が大勢いる。

なぜかと言えば、ワーキングプア、低所得階層が増え続けてきたからだ。

2010年代における貧困層の拡大は、実はかなり顕著であり、休業補償などが不足すれば、預貯金や蓄えがすぐに底をつく世帯が膨大に形成された。

例えば、実質賃金は上がるどころか、近年は低下傾向が続いている。

また、その一方で、国民負担率(税金・社会保険料など)の上昇も見られる。

2010年度の国民負担率は37.2%だったが、2018年度は44.1%まで引き上がっている。

働いても働いても、税や保険料が上がる一方で、手取り収入が上がらないのである。

企業に勤めている方は少し前の給与明細と今のものを見比べてみてほしい。

天引きされている金額の多さに驚くはずである。

だからこそ、可処分所得の低下も止まらない。

特に低所得層は以前より、さらに低所得に陥っている。

例えば、所得が最も少ない下位10%(第1十分位)の可処分所得が、1997年を100とすると、2015年には77.7%まで下がっている。

都留文科大学の後藤道夫名誉教授によれば、生活保護基準以下の貧困層(2012)は、すでに約3000万人にも及ぶが、生活保護制度では約210万人を捕捉する程度である。

つまり、いくら外出するな、と叫び続けても、政策の不備によって拡大したワーキングプアは問答無用で働きに出ていくだろう。

そうしなければ、暮らしていけないのだから。

これらの人々は、新型コロナウイルスの感染リスクだけでなく、収入が途絶えて食えなくなるリスクと平常時から隣り合わせで暮らしている。

政府がここに手当を怠ってきて、今更、外出自粛を呼びかけて応じるはずもないだろう。

もちろん、ワーキングプア層の労働現場は、テレワークが難しく、出勤しなければならないところばかりである。

テレワークなどインターネット環境整備もされていない。日本はすでにIT後進国なのだから当然である。


https://news.yahoo.co.jp/byline/fujitatakanori/20200406-00171772/
4/6(月) 12:17