AFP=時事】結核を予防するために数十年間にわたり利用されている一般的なワクチンが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)から医療従事者を守る助けになり得るだろうか──。

 新型コロナウイルスに特化した予防接種が開発されるまでには、まだしばらく時間がかかると予想されている。そうした状況において、抗結核ワクチンBCGが有する潜在的な有効性についての調査が進められている。BCG接種は世界中で多くの人が子どもの時に受けている。

 BCGワクチンを接種している子どもは、COVID-19とは別の呼吸器疾患に罹患しにくい。BCGまた、一部ぼうこうがんの治療にも用いられているほか、1型糖尿病などの自己免疫疾患やぜんそくなどの予防にも効果がある。

 そのため研究者らは、新型コロナウイルスに対しても、感染リスクの軽減や症状の重症化を抑えるといった効果がBCGにあるかどうかを検証したい考えだ。

 仏国立保健医学研究所(INSERM)のカミーユ・ロクト(Camille Locht)氏はAFPの取材に対し、BCGワクチンの全例接種が2007年まで実施されていたフランスでは、「調査対象者の大半が初回のワクチン接種をすでに受けていることになる」と話した。ただ、その予防効果が時間とともに低下することにも触れた。

 ロクト氏は、BCGワクチンに何らかの効果が確認された場合は、COVID-19に対処する取り組みの最前線にいる医療従事者を「最初の対象」にすべきとの考えを示している。しかし、臨床試験の詳細について取りまとめを行っている同氏の考えとは逆に、BCGが予防効果をもたらすとの考えには依然として慎重な見方を示す専門家らもいる。

 そうした中でオランダ・ラドバウド大学(Radboud University)が最近、同国のユトレヒト大学(Utrecht University)と協力して医療従事者数百人を対象とする臨床試験を実施すると発表した。ラドバウド大のミハイ・ネテア(Mihai Netea)教授(実験内科学)は、「この調査を行う理由がまさにそれ(考え方の相違)だ」と話す。

■先天性免疫系を「訓練」
 オランダの臨床試験では、医療専門家ら500人にBCGを、500人にはプラセボ(偽薬)をそれぞれ接種する。ネテア教授は、今回の流行期間中にBCGワクチン接種グループでの感染者が少なければ、結果は有望と考えることができると述べる。

 臨床試験実施の発表に際してラドバウド大は、BCGワクチンが新型コロナウイルスを直接的に防ぐわけではなく、免疫系を高めることで抵抗力の向上と感染の軽減につながる可能性があると説明している。

 これは、特にBCGや麻疹などのような病原性を低下させたウイルスがごくわずかに含まれる弱毒化ワクチンによって、攻撃に対してより効果的に対抗できるよう先天性免疫系を「訓練」して準備するイメージだ。

 COVID-19の場合、ウイルス自体の感染に加え、一部の患者では過剰な免疫反応が起こり「炎症性サイトカイン」と呼ばれるタンパク質の産生が制御不能となる。

 INSERMのリサーチディレクターを務めるローラン・ラグロ(Laurent Lagrost)氏は、「ワクチン接種、特にBCGワクチンは、この炎症免疫反応の調整を改善する助けになる可能性がある」と述べる。同氏は炎症と免疫系の関連性に関する研究に取り組んでいる。

 この他、オーストラリアでも医療従事者約4000人を対象とするBCGワクチンの臨床試験が、豪小児医療研究所「マードック・チルドレンズ・リサーチ・インスティチュート(Murdoch Children's Research Institute)」によって始まっている。【翻訳編集】 AFPBB News

4/7(火) 12:39配信
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