夜の政治

新型コロナウイルス対策で政府が持つ権限の限界が明らかになる中、安倍晋三首相(自民党総裁)は7日の衆院議院運営委員会で、憲法を改正して「緊急事態条項」を創設する構想に前向きな見解を示した。ただ、主要野党は改憲の論議に慎重で、危機から国民の生命を守るための抜本的な態勢の構築は放置されている。(内藤慎二)

 「緊急時に安全を守るため、国家や国民がどのような役割を果たし、国難を乗り越えていくべきかを憲法にどう位置づけるかは極めて重く大切な課題だ」

 首相は議運委で、緊急時には一時的な私権の制限を可能とする緊急事態条項の創設を提案した日本維新の会の遠藤敬国対委員長にこう答えた。自民党の改憲案に緊急事態条項が盛り込まれていることにも触れ、「新型コロナへの対応も踏まえつつ、憲法審査会で与野党の枠を超えた活発な議論が展開されることを期待したい」とも語った。

 新型コロナの感染防止を目的とした政府の緊急事態宣言は、罰則付きで医薬品の収用などを可能とする一方、不要不急の外出を強制的に止める効力を持たない。諸外国の多くの憲法に明記されている緊急事態条項を欠いていることが原因とされる。維新は馬場伸幸幹事長が1月末に国会で新型コロナに絡め緊急事態条項の必要性に言及しており、自民党に議論の早期開始を迫った形だ。

 自民党にも問題意識はあり、衆院憲法審の幹事は3日、「緊急事態における国会機能の確保」をテーマに議論を深めるべきだと立憲民主党に提案。憲法に明記されている本会議の定足数や国会議員の任期について、緊急時の対応を協議すべきだと訴えた。

 これに対し、共産党の小池晃書記局長は記者会見で「究極の火事場泥棒だ」と猛反発し、立民の蓮舫副代表はツイッターに「黙れ、と言いたくなった」と投稿した。結局、維新を除く野党は7日の会合で、新型コロナの対応を優先すべきだとして提案に応じないことを決めた。

 与党内には「国会の機能に危機が迫っているのに議論を拒むならば説得の余地はない」(閣僚経験者)との声があり、国民の安全を守るため、主要野党以外で憲法審を動かすべきだとの流れが勢いを増しつつある。

4/7(火) 20:53配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200407-00000625-san-pol