新型コロナウイルスの感染拡大で、世界中でマスク姿の人が増えている。しかしトランプ米大統領など、欧米では「マスクはしない」という人が依然として多い。英国在住24年の社会学者・堀井光俊さんは「ようやくマスク姿の英国人を見かけるようになったが、まだ少数派。その背景には欧米の独特の文化がある」という--。

■口と鼻を隠すのを非常に嫌がるイギリス人

新型コロナウイルスの感染が世界各地に広がっています。3月終わりごろから、イギリスでもマスクを着けた人を見かけるようになりました。その数はチラホラといった程度。現時点でも少数派ではありますが、私はその光景に非常に驚いています。

なぜなら、私はイギリスで20年以上生活していますが、公衆の場でイギリス人がマスクを着けているのを一度も目にしたことがなかったからです。

日本で主流の不織布サージカルマスクは見かけることはなく、工業用の防塵(ぼうじん)マスクが主流です。おそらく日曜大工用に購入したものを使いまわしているといった感じ。日本で一般的なマスクに比べとても高価なものです。

大部分のイギリス人は顔の一部、特に口と鼻を隠すのを非常に嫌がります。しかし、どの部分も絶対に隠さないかと言ったら、そうではありません。多くの人がサングラスをかけますので、目を隠すのはオーケーなようです。これは欧米に共通する習慣と言えるでしょう。

■東洋人、マスク、コロナ…いわれなき人種差別の恐れも

私はイギリスにある日本の学校機関系列の英語研修施設で仕事をしています。新型コロナウイルスの問題がイギリスでも大きなニュースになり始めたころ、日本の大学生たちを受け入れましたが、その時、まず「外出時にマスクをしないように」と注意をしました。

当時、東アジア系の留学生が、人種を理由に暴行される事件が発生し大きなニュースになっていたからです。イギリス人が着けないマスクを着けて街を歩けばかなり目立ってしまい、標的になりかねない。マスク姿がヘイトクライム(憎悪犯罪)の誘因になってしまう危惧がありました。

また、学生たちは近隣の小・中学校を訪問する予定もあったため、子供たちが怖がってしまうのを避けるためにもマスクを着けないように呼びかけました。

イギリスの人たちは、マスク姿の日本の学生を見るたびに、それに驚きます。「この学生は何でマスクしているの?」と質問を受けることも度々でした。私からは「これは日本の習慣で……」と説明してきました。しかし、マスクを着けるという習慣が全くなかったイギリス人にとって、不思議な光景に見えたことでしょう。

これほどマスクを嫌っていたイギリス人ですが、そんな状況が今、変わり始めています。

■マスク不要論を貫くイギリスのメディア

新型コロナウイルスが中国で問題化した時点から、イギリスのメディアでは、マスク姿の人々の映像がその象徴として扱われています。イギリスの主要メディアは、ほぼ一貫して公衆でのマスク着用は不要であるとの意見を貫いています。

本稿では主に英国放送協会(BBC)の報道に見られる例を簡潔に紹介します。

私の記憶にある限り、少なくともBBCでは1月から新型コロナのニュースが大々的に報じられており、それが常にマスクのイメージとセットになっていました。しかし、BBCがマスクについてきちんとした解説を始めたのは3月になってからです。

3月2日にBBCの保健担当編集員ファーガス・ウォルッシュ氏が同局のニュース番組上でマスクに関する解説を行いました(※1)。彼は番組上、一般的なサージカルマスクを手にしながら、これは「効果的ではない」「間違った衛生意識を与える」と強調します。

しかし「効果なし」と断言しておきながら「医療従事者のために残しておくべき」とも加えます。しかし、医療従事者が使うものなのだから予防効果があるはずだという方向には話は進みません。なぜか「だからマスクは必要ない」と結論付けられてしまうのです。

■高機能マスク「Oxybreath Pro」の広告は禁止に

さらに「感染者がつける場合は感染防止効果がある」とした後で、「そもそも感染者は自宅にとどまっているべき」と付け加え、マスク着用の必要性を徹底否定します。

無症状の感染者もいますので、健常者も感染者であり得るという前提ですべての人にマスク着用を奨励する理屈も成り立ちそうですが、なぜか議論はその方向に向かわず、マスクは不要という結論に収束していきます。

※続きはソースで
https://news.livedoor.com/article/detail/18099624/