細い9本の針を刺す「はんこ注射」と呼ばれるBCGワクチン接種について、誤って皮下注射し、発熱やじんましん、血尿などの健康被害が出ていたことを厚生労働省が10日、明らかにした。BCGは0歳児が対象の結核予防ワクチンだが、新型コロナウイルス感染症を予防しようと接種を受けた成人だった。乳児向けの在庫が不足しており、製造元は目的外の使用を見合わせるよう医師らに求めている。

 BCGは本来、腕に塗ったBCG溶液のうち、細い針でわずかな量だけ体内に入れる。説明文書には「絶対に注射してはならない」と記載されている。同省によると、4月初め、BCG溶液を成人に全量注射し、間もなく発熱などがあり救急外来を受診したという。もともとBCGを扱っていない医療機関だったため、誤った可能性がある。

出荷量3倍に「乳児接種に懸念」

 BCGは、新型コロナウイルスにも有効だとする説が浮上し、海外でも研究が始まっている。製薬会社「日本ビーシージー製造」によると、3月末に出荷量が通常の3倍に急増した。乳児の分を確保するため、現在は出荷を抑えているという。国内メーカーは同社だけで、出生数を基に8カ月以上かけて製造するため、急な需要の増加には対応できない。

 東京都内の医療機関では入荷できない状態が生じていて、開業医らでつくる東京保険医協会は9日、「乳児への定期接種ができなくなる」との懸念を同省に伝えた。

 大人への接種については、日本小児科学会が「(安全面の)知見は十分ではない。すでに免疫がある場合、副反応が出る可能性がある」との見解を示し、注意を呼び掛けている。【熊谷豪】

毎日新聞2020年4月10日 20時45分(最終更新 4月11日 12時22分)
https://mainichi.jp/articles/20200410/k00/00m/040/275000c