【ワシントン=河浪武史】国際通貨基金(IMF)は14日改定した世界経済見通しで、2020年の成長率予測をマイナス3.0%に引き下げた。新型コロナウイルスの影響で1月時点から6.3ポイントも下方修正した。09年の金融危機時を超えて「大恐慌以来の経済悪化」(ゲオルギエバ専務理事)となる懸念がある。ただ、感染拡大を封じ込めれば、21年は6%近い経済成長が可能とみる。

20年の世界経済は2.9%のプラス成長だった19年から大幅に悪化し、09年(0.1%減)以来のマイナス成長に落ち込みそうだ。90兆ドルある世界の国内総生産(GDP)が1年間で3%も縮小すれば、経済規模が2.7兆ドル(約290兆円)も失われる計算だ。

日本は5.2%のマイナス成長を予測し、09年(マイナス5.4%)以来の大幅な落ち込みとなりそうだ。感染者数が57万人と世界最大の米国は、マイナス5.9%と急激な景気悪化が避けられない。経済活動が大幅に制約されたユーロ圏も、同7.5%と厳しい景気後退となり、外出制限が続くイタリアは9%のマイナス成長と予測した。

ただ、新型コロナの影響を真っ先に受けた中国は4〜6月期から段階的に回復軌道に戻り、20年の成長率は1.2%のプラスを維持できそうだ。感染の拡大前に大規模に経済活動を制限したインドも、1.9%のプラス成長を見込む。一方で通貨安で苦しむブラジルや南アフリカは一段と景気が下押しされ、それぞれ5%台のマイナス成長に落ち込みそうだ。

IMFの基本シナリオは、4〜6月期が景気の最悪期で、20年後半から経済活動を段階的に回復できるとする。そのため21年の世界経済は5.8%の急成長を見込んだ。日本も21年は3.0%のプラス成長を見込み、潜在成長率を上回る持ち直しを予想している。

ただ、足元の経済は新型コロナだけでなく、原油安や金融不安など「多重危機」(IMF)の状態だ。原油価格は年初から一時65%も下落し、世界的な株安に拍車をかけた。IMFは20年の世界の貿易量が前年比11%減と大幅に落ち込むとみており、国際的なサプライチェーン(供給網)の分断も深刻だ。新型コロナの感染拡大を早期に抑えられなければ、2年連続のマイナス成長に陥るリスクもあると指摘する。

日本経済新聞 2020年4月14日 21:30
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58036520U0A410C2MM8000/