コロナショックの深刻な影響
内定取り消し、コロナ切り――。

日本労働弁護団は4月5日に実施した「新型コロナウィルス感染症に関する労働問題 全国一斉ホットライン」の集計結果を4月8日に公表。東京では121件、全国では4月8日時点で412件の問い合わせがあったという。

相談内容は多い順から、「賃金不払い」(80件)、「休業・休暇など」(75件)、「委託・フリー個人事業主からの相談」(41件)、「非正規労働者の契約終了」(25件)、「正規労働者の契約終了」「労働条件変更」(各21件)、「派遣切り」(16件)、「採用内定取り消し」(12件)――など深刻だ(重複相談を含む)。

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厚生労働省は一般の労働相談のほか、4月13日からは全国56か所の新卒応援ハローワークに「新卒者内定取消等特別相談窓口」を設置するほどの事態になっている。

こうしたなかでは、就職氷河期世代の採用がより困難な状態になるのは避けられないだろう。そして、雇用が悪化する経済環境ができつつある。

“世界のトヨタ”でさえ…
新型コロナウィルスの拡大で4月7日、政府による緊急事態宣言で5月6日まで外出自粛が要請され、飲食店や小売業は軒並み臨時休業を迫られた。

外出自粛要請により、食品や生活必需品を買う以外の消費行動は制限され、経済は停滞。“世界のトヨタ自動車”さえも減産体制に踏み切るというコロナショックが起こっている。

帝国データバンクは4月8日時点での上場企業の業績修正動向調査を発表。新型コロナの影響で業績予想を下方修正したのは161社で、減少した売上高は合計で約1兆4100億円。影響の拡大が今後も懸念されるとした。

りそな総合研究所は4月9日に「ショートコメント」を発表。緊急事態宣言によって全国で4兆9000億円の消費が減少すると試算した。2月頃から3月にかけての消費減少分は3兆5000億円としており、合わせると8兆4000億円もの消費が失われることになる。

東京商工リサーチの「新型コロナウィルス」関連倒産状況によれば、4月10日正午時点、全国で経営破たんが51件に達し、うち倒産が26件、準備中が25件だった。

「新型コロナ」関連の経営破たん第1号は、2月21日までに事業を停止して破産準備に入った富士見荘(愛知県蒲郡市)だったとしている。

経営はたんは、4月に入ってからの急増ぶりが目立つという。都道府県別では北海道が最多の7件、次いで東京都の6件となる。業種別では、宿泊業12件、飲食業7件に集中している。

各社の報道によれば国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事が4月9日、新型コロナウィルスのパンデミック(世界的流行)によって経済成長率が大幅なマイナスとなり、2020年の世界経済が1929年の世界恐慌以来、最悪の見通しになると予測した。

もはや、派遣切りが起こった2008年のリーマンショック以上の雇用不安どころではなくなるだろう。

また置き去りにされる氷河期世代
こうしたなかで懸念されるのは、就職氷河期世代が、またも置き去りにされることだ。

遅きに失したとはいえ国をあげて始まったばかりの就職氷河期世代の支援を担当する西村康稔経済再生担当大臣は今、コロナ対策に追われている。

かろうじて中央省庁や地方自治体での就職氷河期世代を対象とした中途採用は続いているが、もともとコロナショックで打撃を受けている
飲食業や小売業、タクシー運転手などの業界に氷河期向けの求人が多かったため、企業の採用意欲にブレーキがかかることは避けられないだろう。

2020年度、就職氷河期支援プログラム関連の予算は合計1300億円が計上されたが、細かく事業を検証すると、ほとんどが過去の施策の焼き直しになっている。そして、もともと他の年齢層も対象となる事業も多い。

政府が昨年度の段階で打ち出していた「就職氷河期世代支援に関する行動計画2019」のなかで新規の新規事業として柱となるのは、「ハローワークへの専門窓口の設置」と業界団体を通じて行われる「短期資格等習得コースの創設」の2つとなる。

短期資格等習得コースの事業には、今年度34億6500万円の予算が投じられる。建設、運輸、農業、ITなどの業界団体に委託する形で、1万5000人の就職を目標としている。

ただ、建設や農業は外国人労働者を頼みにするほどの人手不足。裏返していえば人気のない業界だ。そこに就職氷河期世代が就職を決めるとは考えにくい。

日本総研の下田裕介主任研究員は、「全体を通してこれまでの支援策の延長線上であることは否めない。

https://news.livedoor.com/article/detail/18121642/
2020年4月15日 6時0分 現代ビジネス