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2020/04/14 20:00
新型コロナ対策で独自路線を貫くスウェーデン その理由と現在地


OFFICIAL COLUMNIST
吉澤 智哉


スウェーデンは、4月14日現在、周辺諸国と異なりロックダウンをしていない。近隣のデンマークやノルウェーと比べると死者数は確かに多いが、国としてのスタンスを変えるつもりはないようだ。

先日のForbes JAPANの記事のようにロックダウンを検討中との報道もあったが、現地ではまだその言葉を耳にはしていない。こうしたニュースは海を渡り、言語を越えると間違った解釈もされがちなのかもしれない。しかし、法整備等の準備はできており、いつでもロックダウンへ舵を切ることも可能だ。

そんなわけで、普段よりは少ないものの、ショッピングモールには人が溢れている。エンジニアとして働く私は在宅勤務となっているが、保育士である妻は通常通り出勤し、子供たちは毎日元気に学校へ通っている。普段から在宅勤務をよくする私からすれば、我が家における状況はほぼ日常と変わらない。


休校措置は問題の先送りにしかならない

高校や大学などの高等教育機関はオンラインでの授業へと切り替わっているが、小中学校と就学前学校(スウェーデンでは幼保一体)は休校措置を取っておらず、これには公衆衛生庁がサイト上で以下の考え方に基づくと発表している。

・休校措置と新型コロナウイルス(Covid-19)感染拡大の因果関係が不明
・世界中の学校で新型コロナウイルスが大量に拡散したことを示すデータがない
・就学前学校と小中学校を閉鎖した場合は、多くの親が子供たちと在宅となり、医療従事者も例外ではなくなり、つまりは医療リソースの問題に直結する

また、公衆衛生庁所属の疫学者、Anders Tegnell氏は「休校措置を取った後に一斉に開校した場合は、新型コロナウイルスの急速な感染拡大が懸念される。したがって休校措置は問題の先送りにしかならない」と述べている*1。

Tengell氏は、ほぼ毎日会見を行い、日々の状況をアップデートしている。法律に基づく新たな規制等は、首相や閣僚級の政治家によって行われるが、その際にもTegnell氏をメディアで頻繁に見かける。彼がスウェーデンの新型コロナウイルス対策の陣頭指揮を取っているのだ。

彼が以前説明した戦略は、諸外国と同内容で、感染のピークを医療キャパ内に抑え、流行を遅らせることだ。前述のように「休校措置は問題の先送りにしかならない」と述べていたのは、そのピークの山を後でつくってしまうという仮説からだ。

集中治療の病床数や、現在の患者数はSIR (Svenska Intesivvårdsregistret)という機関により公表されている。SIRによれば、4月14日現在、国内合わせて1019の集中治療病床数に対して、患者の数はその90%に迫っている。今後は残りの10%で対応できるのかが焦点となっている。
(リンク先に続きあり)