東京・池袋で昨年4月、高齢ドライバーの乗用車が暴走し、12人が死傷した事故から19日で1年を迎える。妻の松永真菜(まな)さん=当時(31)=と長女の莉子(りこ)ちゃん=同(3)=を失った会社員の男性(33)は、交通事故をなくすために活動を続けている。「もう誰にもこんな思いをさせたくない」。妻子との誓いは、日増しにその重みを増している。(玉崎栄次)

 「1秒、1秒、真菜と莉子と向き合ってきた」

 男性はこの1年をこう振り返る。事故直後、病院のベッドに横たわる妻子は傷だらけだった。莉子ちゃんのおなかの上にはウサギのぬいぐるみ。「シールちゃん」と名付け、いつも持ち歩き、事故に遭った日も一緒だった。葬儀で棺に入れた。

 男性は後を追うことを考えたが、2人の命を無駄にしないことが、残された自分にできることだと思い直した。事故から5日後に会見を開き、事故の悲惨さを訴えた。その後も取材の要請があれば受け、2人の写真や映像も公開している。

 昨年7月には、事故を起こした飯塚幸三被告(88)=自動車運転処罰法違反(過失致死傷)罪で在宅起訴=に厳罰を求める署名活動を始めた。2カ月で約39万人分の署名が集まり、東京地検に提出した。こうした活動はすべて、事故がもたらす悲惨さを知ってもらうためだ。

 今後始まる公判には被害者参加制度を使って出廷し、飯塚被告が事故とどう向き合っているのかを確かめたい。

 まもなく迎える命日。しかし、節目という意識はない。「悔しいが、交通事故がゼロになることはない。だから、この活動に終わりはない。やるべきことをずっと続けていきたい。真菜と莉子のためにも」

2020.4.15 12:46
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