https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200416-00000010-pseven-soci

新型コロナウイルス対策のための緊急事態宣言が出されてから、街からは明らかに人影が減った。
それでもつい目につくのは高齢者の姿だ。開店前の都心のドラッグストア前には長い行列。

「いつも先頭は同じおじいさんです。マスクの入荷は未定ですと何度伝えても状況は変わりません」(ドラッグストア店員)

開院直後の整形外科クリニックの待合室では、女性たちがおしゃべりに夢中だ。

「通院する人は減りましたが、膝や腰の痛みでリハビリに通う“常連さん”は相変わらず。
“不要不急”の通院で感染しないか心配で…」(クリニック受付)

街中に年配の人の数は決して多くはないのに、それでもつい気になるのは、高齢者の方が新型コロナの重症化リスクが高いからだろう。
日本感染症学会などによると、中国人患者の死亡率は40代までは1%を切る一方、60代は3.6%、70代は8%、80代では14.8%に達するという。

重症患者が増えれば、医療機関はパンクし、新型コロナ以外の患者も適切な治療を受けられなくなる可能性がある。
高齢者の感染は本人の命にかかわるだけでなく、「医療崩壊」を招くという社会全体のリスクとなるのだ。

とはいえ、高齢者の中には外出せざるを得ない人もいる。その最たる例が独居老人だ。

「65才以上の単身世帯は増える一方で、全国で500万世帯以上あるとされます。独居老人は家族のサポートを得にくく、
感染を恐れながらも生活必需品などは自分で購入したり、持病の薬を取りに行かねばなりません」
(行動経済学に詳しいマーケティングライターの牛窪恵さん・以下同)

デジタルに疎い年配の人はリアルタイムの情報を得るのに高いハードルがあり、社会からの疎外感や孤独を感じやすいことも一因だ。

「若い世代なら買い物もコミュニケーションもネットで自在に行えますが、年配のかたには難しい。ドラッグストアにせよ、病院にせよ、
いつものメンバーで顔を合わせて『今日も会いましたね』といったコミュニケーションを取ることで、これまで安心感を得てきた部分もある」

外出自粛の中で高齢者の姿を見るとつい心配になる若者たちがいる一方で、感染しても軽症で済む可能性が高いために
危機感がない若者も少なくない。阪神・藤浪晋太郎投手(26才)が若い女性らと大人数で飲み会を開いて感染したのは最たる例だ。
また、大学やバイトが休みのため、実家に“コロナ疎開”をして「クラスター(感染集団)」を招くケースも見られた。

「いまの若者の多くは、慎重で賢い。でも一部には、“カリギュラ効果”という『ダメと言われると反発してついやりたくなる』
心理が働いてしまう人もいるでしょう。

また、こうした時期こそなじみの飲食店やライブハウスなどに出かけることで、お金を使い経済を回すべきという主張に
同調した人も一定数いるのではないか。取材すると『SNSで誘われて断れなかった』という若者もいる。
NOと言いにくい世代で、『行かないの?』との圧力に負けてしまうこともあるようです」

危機感のない一部の若者に、高齢者から「こんなに新型コロナが流行したのは、若者が出歩くからだ。
自分たちはかかったら死ぬのに」と怨嗟の声が上がるのも無理はない。

新型コロナは、高齢者と若年層で明らかに重症化リスクが違うことで、両者は違ったスタンスで感染と向き合うことになった。
しかも、外出自粛の社会の重苦しい雰囲気にも流されて、世代間で、お互いに眉をひそめ合う“分断”も起きつつある。

「本来、それぞれがどのような理由や事情で外出しているのかがわかれば、お互いの立場を慮ることができます。

特にひとり暮らしの高齢者の多くは、情報や体力面で若者より弱い。できれば彼らに若い世代から“困りごと、ありませんか?”
と遠くからでも声をかけてあげてほしい」

社会一丸にならないと、いずれにせよ感染終息は遠のき、外出自粛は長引くばかり。実は、思いやりや寛容な気持ちこそが、
最大の感染対策なのかもしれない。