新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、マスクなど医療物資の不足が深刻化している事態を受け、異業種の企業が生産に協力する動きが相次いでいる。安倍晋三首相による「オールジャパンでの取り組みが必要」との産業界への要請に応じ、日産自動車は16日、顔全体を覆う医療用防護マスクを今月から生産し、医療現場に提供すると発表。ANAホールディングス(HD)も医療用ガウンの製作を支援する計画を明らかにした。

 安倍首相は16日、テレビ会議システムを使って、経済同友会の桜田謙悟代表幹事や各社の経営陣と会談し、医療物資の生産強化を呼びかけた。協力要請は、経団連の中西宏明会長らに15日にも行った。

ANAHDの片野坂真哉社長は16日の会議で、「医療用ガウンの増産に向けてマンパワーを提供する」と表明。社内の職種や性別を問わず希望者を募集し、都内のANA訓練施設内で作業する計画だ。

 医師らの二次感染を防ぐ「医療用フェースシールド」の国内製造を4月中に始める日産自動車の内田誠社長は、「3Dプリンターを活用して月2500個を生産し、医療現場に提供する」と語った。さらに、スペインでは今週から、人工呼吸器の生産を電動車部品メーカーなどと協力して開始する計画だ。

深刻な品不足となっているマスクについて、業界最大手のユニ・チャームの高原豪久社長は、「業界全体の月間供給量を秋には1億枚増やせる」と説明。現状は国内で月間3億枚程度不足しているとし、政府が全世帯に配布する布マスクと合わせれば必要な供給量が確保できるとの見方を示した。

 化学メーカー、デンカの山本学社長は、新型コロナに対する治療効果が期待されている抗インフルエンザ薬「アビガン」の原料生産に向け、3年前に停止したプラントの再稼働を説明。「困難を伴うが、デンカにしかできないという心意気で実現する」と強調した。

 今回、新型コロナの早期収束に向けて、産業界は、業種を超えての取り組みを拡大している。専門でない領域であるうえ、人命や健康に関係する事業であり、この面で、リスクを指摘する声もある。

2020.4.16 21:03
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