新型コロナウイルスの猛威は「神戸戦争」が続く暴力団にも拡大している。六代目山口組傘下の組員がこう話す。

「コロナウイルス感染者が出て、うちの幹部までPCR検査受けるほどです。今、抗争が続いているが、そんな話は一切なく、親分からは『外出はするな。コロナに感染するな。抗争もするな。厳命だ』ときつく言われました」

 山陰地方在住の女性が4月初旬、新型コロナウイルスに感染したと発表された。その後、女性の母親やアルバイト先などで次々とPCR検査で陽性が確認され、多くの感染者が出た。

「女性がアルバイトしていたのは、ガールズバーです。女性がカウンター越しに、男性客を接客する“三密”のスタイルで、店からクラスターが生まれてしまいました」(地元関係者)

 そのクラスターはさらに拡大し、暴力団業界に“衝撃”が走った。

「ガールズバーを実質的に経営しているのは、六代目山口組傘下の組に所属する組員でした。その組員をPCR検査したところ、感染が確認され、病院に収容された。そして、六代目山口組の幹部も濃厚接触者として、隔離され、PCR検査を実施。こちらは陰性でしたが、組員たちも『親分が陽性ならどうしよう』とハラハラドキドキだったそうだ」(捜査関係者)

 暴力団員は、一般の人と比較して、ウイルスに対し、抵抗力が弱いという。山口組系の元暴力団組長で作家の竹垣悟氏はその理由についてこう解説する。

「暴力団員の多くは入れ墨が入っており、毛穴を防ぐので汗が出ず、皮膚呼吸がしにくい。だから肺、心臓など呼吸器系が弱くなる傾向がある。それに日常生活の中で暴飲暴食は当たり前。規則正しい生活は刑務所か拘置所にいる時だけです。私も入れ墨が入っていますが、一般の方と比較して体力は弱いと感じます。現役の暴力団となれば、入れ墨の影響で、抵抗力や免疫力は落ちると思うので、新型コロナウイルスに感染しやすいと思います。強がりを言ったところで、コロナには勝てませんよ」

3月下旬、暴力団関係者を震撼させる写真が出回った。体格のいいある暴力団員が新型コロナウイルスに感染し重症化し、治療を受けている様子を撮影したものだ。男性組員の上半身には入れ墨が見え、鼻にはチューブが通され、両手には点滴の針が刺されていた。胸には心拍数を測る機器のようなものも装着されている。

 表情はうつろで、深刻な病状がうかがえる。冒頭の組員はこう言う。

「あの写真はショックだった。コロナがこんな怖いものだったのか、と震えました」

 六代目山口組以外の組でも関東の組所属の3人が新型コロナウイルスの感染が確認されているという。六代目山口組と神戸山口組は抗争の真っ最中で、公安委員会に特定抗争指定暴力団に指定されており、5人以上で集まることが禁じられている。前出の竹垣氏はこう話す。

「新型コロナウイルス感染防止は多人数で集まらないことが大事とされている。暴力団のみなさんも肩で風切って歩き、飲みに行くようなことはせず、自宅で養生。社会に迷惑をかけないようにしてほしい」

2020.4.17 12:12
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