<コロナ危機の在宅勤務が突き付ける「働く」と「休む」の境界線。休めない病の日本人と違い、ドイツでは厳格な法律と社会的合意で有休取得100%を実現している。本誌「日本人が知らない 休み方・休ませ方」特集より>

ドイツのGDPは日本よりも少ないが、休暇については世界でトップクラスだ。その背景には厳格な法律と社会的合意がある。

1963年に施行された連邦休暇法によって、企業は社員に少なくとも24日間の有給休暇を取らせることを義務付けられている。実際には大半の企業が30日の有給休暇を与える。祝日や週末も加えると、ドイツ人は毎年約150日休んでいることになるが、会社や経済は回っている。

管理職以外の社員の有休取得率は100%だ。有給休暇を残す社員はほぼ皆無。むしろ社員が有給休暇を残していると、管理職は労働組合から批判される。また経営者は社員の健康を守る義務があるため、部下に休暇を取らせない管理職は保護義務をおろそかにしているとして、勤務評価を下げられてしまう。

さらに法律によって会社員は1日当たり10時間以上の労働を禁止されている。日本の労働基準監督署に当たる官庁が、ときおり労働時間の抜き打ち検査を行う。社員に10時間以上の労働を恒常的に行わせていることが分かると、企業は最高1万5000ユーロ(約180万円)の罰金、もしくは最高1年間の禁錮刑を科せられる可能性がある。長時間労働を行わせていた課の管理職に罰金を払わせることもあるため、管理職は部下の労働時間を厳しくチェックする。

社員が病気やけがで働けなくなった場合には、企業は最長6週間まで給料を100%支払う。従って、日本のように病気で休むために有給休暇を消化することはあり得ない。病欠と有休を混同することは禁止されているのだ。

 法律・規則を遵守する国民性

2〜3週間の長期休暇も珍しくなく、部長、課長クラスでも2週間の休みを取るのは日常茶飯事。さらには、給料やボーナスの一部を返上して、3カ月〜1年間休むサバティカル休暇を採用している大企業もある。ある企業の管理職は3カ月間のサバティカル休暇を取って、アフリカでボランティア活動を行った。3カ月間世界一周旅行に行った知人もいる。この間、休んでいる社員のポストは空けておかなければならない。

なぜドイツではこんなことが可能なのだろうか。1つの理由は、労働組合の影響力が強いことだ。ワークライフバランスの改善は、第2次大戦以降、労働組合の努力によって得られたたまものである。


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