新型コロナウイルスの猛威が世界を襲う中、自衛隊の海外活動に影響が出始めた。防衛省は、派遣部隊の活動中断も視野に入れて現地状況を慎重に見極める構えだ。

 自衛隊部隊は今年1月から、日本関係船舶の安全確保のため、中東海域で情報収集活動に従事している。任務に当たる海上自衛隊のP3C哨戒機部隊は今月が交代のメドだったが、防衛省は機体のみ交代させ、隊員約60人は任務を当面継続させる方針だ。

 活動拠点であるアフリカ東部・ジブチが、海外からの入国を厳しく制限しているのが理由だ。今月17日までの同国の感染者数は計732人。自衛隊部隊の交代要員も現地入りできない状態だという。防衛省幹部は「現在の部隊に頑張ってもらうしかない」と明かす。

 中東地域には、同じ情報収集活動を行う護衛艦「たかなみ」と、アフリカ・ソマリア沖で海賊対処活動に従事する護衛艦「はるさめ」の2隻もいる。寄港先のオマーンでは、燃料や食料品などの補給は可能だが、感染予防のため隊員の下船は認められていない。6月には「たかなみ」と交代で護衛艦「きりさめ」が4か月間の任務に入るが、上陸制限はしばらく続きそうだ。

 海外派遣中の護衛艦の隊員にとって、寄港地での下船は貴重な安息で、部隊の士気を維持するにも重要だ。海自は「いかに隊員のストレスを軽減するかが心配事」(山村浩海上幕僚長)といい、家族らと連絡が取りやすいよう通信機器を整備したり、息抜きのためのDVDを充実させたり対応を急いでいる。

 また、エジプト東部シナイ半島でイスラエル、エジプト両軍の停戦監視にあたる多国籍軍監視団(MFO)への派遣隊員も同様の状況に陥っている。派遣されたのは司令部要員の陸上自衛隊員2人で、昨年4月下旬の任務開始から1年の交代時期を迎えるが、交代が難しい状況だ。河野防衛相は記者団に対し、「最悪の場合は戻ってくることも当然、最後の選択としてはある。そうならないように準備したい」と話している。

読売新聞 2020/04/19 12:01
https://www.yomiuri.co.jp/politics/20200419-OYT1T50032/