営業利益は1兆3500億円の赤字。純利益は7500億円の赤字??。

4月13日、ソフトバンクグループ(SBG)は2020年3月期の業績予想を発表した。SBGにとって業績予想の開示は今回、初めてとなる。そもそも業績予想を開示していないので、今回の開示はいわゆる「業績予想の下方修正」には当たらない。

純利益は7500億円の赤字に転落

ではなぜ、今になって業績予想を公表したのか。SBG広報部は「保有する上場株式の3月末時点の終値を反映し、その他の情報を含めて見通しがまとまったのが4月13日。市場環境悪化の中、プロアクティブ(積極的)に業績見通しを提供することが投資家の利に資すると考えたため」と説明している。

つまり、東京証券取引所が上場企業に対して求める業績予想修正のルールに従ったものではなく、投資家のために積極的に情報開示した結果なのだという。

業績予想後に見込まれる売上高は6兆1500億円(前期は9兆6022億円、36%減)、営業利益は1兆3500億円の赤字(同2兆3539億円の黒字)。税引前利益は2500億円の黒字(同1兆6913億円、85.2%減)で、純利益は7500億円の赤字(同1兆4111億円の黒字)と、大幅な減収減益となる。

減収幅が約3.4兆円に及んだ主な要因は、アメリカで携帯通信事業を営む子会社スプリントとTモバイルの合併が確実となり、統合後の新会社であるTモバイルがSBGの持ち分法適用関連会社になるためだ(合併は4月1日に完了。同日から持分法適用関連会社に)。合併が確実になったのは3月31日だったとして、2020年3月期にスプリントを本業ではない「非継続事業」とみなした。

SBGはIFRS(国際会計基準)を採用している。IFRSでは、期中に非継続事業とみなした事業の売上高を期初にさかのぼって取り消すルールになっている。Tモバイルとの合併が完了していない2019年4?12月期までは、SBGの売上高にスプリントの売上高を計上してきた。

しかし、Tモバイルとの合併が確実になったため、2020年3月期の期初にさかのぼってスプリントの売上高を連結から外した。ちなみに2019年3月期の決算数値からスプリントの売上高を除くと、2020年3月期は前期比で564億円、0.9%の実質増収となる。

ウーバーやウィーで巨額損失

一方、1兆3500億円の営業赤字はソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の低迷によるものだ。通信子会社のソフトバンクとその子会社Zホールディングス(旧ヤフー)の合計で約0.9兆円の営業利益を見込むが、投資先の公正価値(上場企業は時価総額。非上場企業はキャッシュフロー予想などをもとに算出した金額)が激減し、約1.8兆円の投資損失を計上する。

投資損失の主因は、アメリカのウーバー・テクノロジーズの株価下落やシェアオフィス「ウィーワーク」を運営するウィー・カンパニーの価値下落とみられる。2019年4?12月期に計上していたスプリントの営業利益(1378億円)は、非継続事業となったために計上しなくなったことも響いた。

巨額の営業赤字を計上するのに、税引前利益が2500億円の黒字となるのは、ひとえに中国のアリババのおかげと言ってよさそうだ。

ウィーへの投資や通信衛星ベンチャーのワンウェブへの出資などに関連して計8000億円の損失を計上したのに対し、アリババ株の先渡売買契約決済益が1兆2185億円あるほか、アリババが新株を発行したことに伴う持分変動利益3322億円(2019年4?12月期)などで相殺できた。

そして、純利益が7500億円の赤字になるのは、子会社のソフトバンクやZホールディングスで利益が出ていることによる法人税の支払いや少数株主持分の控除などが3618億円ほどあるためだ。

では、これだけの巨額赤字を計上して、SBGの財務体質は揺るがないのか。SBGの4月13日付けリリースは次の一文で閉じられている。

「なお、当社が従来から掲げているLTVや手元流動性に関する財務方針に変更はありません」

手元流動性は1.9兆円を確保

LTVとは「ローン・トゥ・バリュー」の略で、一般的に保有資産に対する負債の比率を指す。SBGでは、アリババなど保有している保有株式価値を分母、SBGの純有利子負債を分子(いずれも単体)にして比率を算出しており、2019年12月末時点で16.1%(分母の保有株式価値は29.9兆円、分子の純有利子負債は4.8兆円)。SBGは「通常時は25%未満で運営し、異常時でも上限は35%」としている。

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https://toyokeizai.net/articles/-/345247