かわいがっていた犬や猫が死んで悲しむ飼い主のため、ペットのクローンを作って販売する−。こんな小説のようなビジネスが中国で広がりつつある。北京のベンチャー企業が2018年から一般向けに始め、1匹数百万円と高額にもかかわらず、依頼が相次いでいる。ただ、クローン技術の商業利用には専門家から「生命の尊厳を脅かす」と規制を求める声も上がる。

 ふわふわした茶色い毛の小型犬がマンション内をところ狭しと駆け回る。「死んだ愛犬そっくり。性格まで似ている」。北京近郊に住む40代男性の李さんは満足そうに目を細めた。

 17年間飼ってきた雌のポメラニアンが死んだのは18年7月。「生後2、3カ月から育ててきた私にとって娘のような存在だった」。喪失感に苦しむ中、頭をよぎったのがクローンペットだった。死んだ犬の皮膚を冷蔵保存。昨年4月に北京のバイオベンチャー企業「北京希諾谷生物科技(シノジーン)」へ持ち込んでクローン作りを依頼した。

 同7月に生まれたクローンの子犬は2匹。想定外だったが「喜びが増えた。引き取らないわけにはいかない」。死んだ犬とは別の名前を付け、日々成長を楽しみにしている。

 クローンペットに対する批判は李さんも知っている。しかし「全ての科学技術には論争がある。クローンは成熟した技術で、倫理的にも問題はないと思う」と意に介さない。

「クローン技術を生かしてペットロスを解消したい」
 「ペットを亡くした飼い主の6割が心理的な病を患うという調査もある。クローン技術を生かしてペットロスを解消したいというのが私たちの思いだ」。シノジーン社の王奕寧・副総経理(44)は強調した。

 17年末からクローンペット事業に着手。18年7月から一般向けにクローン犬を作り始め、昨年7月からクローン猫も作っている。費用は犬が38万元(約580万円)、猫が25万元(約380万円)。昨年末までに犬46匹、猫4匹のクローンを誕生させた。

 クローンを作るにはまず、犬や猫の皮膚などから体細胞を採取する。皮膚は最低2ミリ四方が必要で、死後1週間以内に採取しなければならない。その後、体細胞から抽出したDNAを卵子に入れ、代理母の犬や猫の子宮に移植する。受注から6〜10カ月後にはクローンを渡すことができるという。米国と韓国にもクローン動物を作る企業があるが「比較的安価に提供できるのが私たちの強み」と王氏は強調する。

 近年のペットブームを背景に、同社の顧客のほとんどは中国人が占める。中には愛犬を連れて中国を訪れ、クローン作りを依頼した日本人もいた。新型コロナウイルスがまん延した今年は、皮膚などを採取できない状態が続いているが、王氏は「中国国内の感染は収まりつつあり、クローンの作業も回復している」と話す。今年は80〜100匹の受注を目標に掲げる。(以下ソースで)

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ソース 西日本新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/036cd2a8346518a8c7c084265a34afae9da08a60