■危機管理上、最も拙い手である「戦力の逐次投入」

 「迷走」「朝令暮改」「後手後手」……。あらゆるメディアでは、連日、安倍政権の新型コロナウイルス対応を酷評する見出しが躍っている。未曽有の国難に直面する中での安倍晋三首相の判断が、極めて心もとない。

 一連の対応をみると、1つの「法則」に行き当たる。最初は小出しにして、足らないとなって追加対策を出したり、判断を変えたりするのだ。だから朝令暮改となり後手後手となる。「戦力の逐次投入」ともいえるこの戦術は、危機管理上、最も拙い手であることは歴史が証明している。

■「もっと判断を早くしておけばよかった」という後悔の言葉

 「1週間遅れることになりましたから、もっと判断を早くしておけばよかった。責任は私にあります。改めて国民の皆さまにおわびを申し上げたいと思います」

 4月17日午後6時過ぎ。首相官邸で行われた記者会見で、安倍氏は謝罪の言葉を口にした。

 自身が任命した閣僚が不祥事を起こして辞任するようなときに「任命責任」を認めて謝罪するようなことは過去にもあったが、自身が判断を誤ったと認めるのは極めて珍しい。

 それもそのはずである。政府・与党はコロナ問題で困窮した世帯に30万円を給付する案を盛り込んだ経済対策を決め、補正予算案を閣議決定もしている。これをいったん白紙に戻し、組み替えて「全国民に一律10万円」の配布を決めたのだ。いったん編成して閣議決定した予算案を組み替えるというのは前代未聞の事態。政府、特に財務省にとっては大失態だ。

 この失態は、国民にしわ寄せが行く。最初から「一律10万円」を決めた場合と比べて、編成のやり直しによって国民の手に渡るのが遅れてしまうのだ。そのことが、プライドの高い安倍氏をして「もっと判断を早くしておけばよかった」という後悔の言葉を吐かせているのだ。

■政府よりも東京都が正しいという意見が圧倒的に多い

 それにしても新型コロナウイルスの対応を巡って安倍政権の迷走はすさまじい。緊急事態宣言を巡っては、東京都や医師会側から早く宣言を出すように要望を受けながら逡巡。宣言は4月7日に出したが、各種世論調査では国民の過半数が「遅かった」と評価している。

 それだけではない。宣言を出した際、一部の施設や店舗に対し休業要請を即時に行おうとしていた東京都に対し、政府は2週間程度、外出自粛の効果を見極めてからにすべきだとストップをかけた。

 しかし東京都だけでなく全国で感染者増の勢いは止まらなかった。安倍氏は、16日に緊急事態宣言の対象を全国に拡大した。「たら」「れば」は禁物だが、この件に関しては政府よりも東京都の主張が正しかったという意見が圧倒的に多い。

 結果として制度自体見送りになった「30万円」の給付基準についても揺れた。

 創設される臨時交付金の使い道については、政府は当初、休業要請に応じた事業者への協力金に充てることは否定的立場だった。これも19日になって容認に転じている。

■「空振り三振は許されるが、見逃し三振は許されない」

 もはや旧聞に属する話だが、コロナ対応の初期には2月25日に策定した政府の基本方針では全国一律のイベント要請を求めなかったのに、翌26日には全国的イベントの中止、延期を要請。さらに翌日の27日には全国の小中高校などに休校要請を行っている。まさにぶれまくっている。

 これだけの事態だけに、ある程度方針が揺れることは責められないだろう。ただし、安倍政権の対応は、1つの傾向が見いだせる。いずれの場合も、最初の対策は控えめで、それでは不十分だと分かったときに追加策を発表するということだ。

 危機管理対応の鉄則として「空振り三振は許されるが、見逃し三振は許されない」というものがある。目の前の危機について、最初に大規模な対策をとる必要があるということだ。結果として過剰な対応(空振り)だったとしても、それは許されるが、不十分な対応(見逃し)は致命傷になりかねない。

全文はソース元で
4/22(水) 18:16配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200422-00034784-president-pol&;p=2