2020/4/25 2:29
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO58503100V20C20A4000000/

欧州連合(EU)とEUを離脱した英国は24日、今週行われた英・EUの自由貿易協定(FTA)など将来関係を巡る交渉で進展が得られなかったと発表した。
特に「公正な競争環境の確保」や「漁業」など4つの対立点で溝が埋まらなかった。英・EUは5、6月に1回ずつ交渉を重ねる予定だが、妥結の道筋は見えていない。
英・EU交渉は、激変緩和のために英がEUに残っているように扱われる2020年末までの「移行期間」中に、関税ゼロで貿易できる現状に近いFTAを結べるかどうかが焦点だ。
交渉は3月上旬に初回会合を開いた後、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で止まっており、今回のテレビ会議が事実上の2回目の会合だった。
EUのバルニエ首席交渉官は24日の交渉後の声明で「失望した」と表明した。
英政府の報道官も同日、「交渉の進展は限定的だった」と説明し、両者の溝が埋まっていないことが鮮明になった。
特に溝が深いのが「公正な競争の確保」の点だ。
EUは英が移行期間終了後に企業寄りに規制緩和して競争力をつけるのを警戒する。
関税ゼロなどEU市場へのアクセスで利益を得るには、英が税制や雇用政策などの面でEUルールに合わせるべきだとの立場を変えていない。
英側は24日の声明でも「EUが他の国と結んだFTAの前例にはないことを(我々に)要求している」と批判し、一歩も譲らない姿勢だ。
もっとも新型コロナで英・EUとも経済面で戦後最大級のダメージを受ける中、拙速な交渉は避けて移行期間を延長すべきだとの声は強まっている。
バルニエ氏は声明で「恐ろしい経済危機の最中に、英国がEUの単一市場や関税同盟から抜けるショックを緩和する合意はできるのか」と年末までの合意に懐疑的な見方を示した。
英・EUの離脱協定では双方が合意すれば、移行期間が最長22年末まで延長できるルールになっている。
ただ英側は今回の交渉後も依然として、移行期間の延長には応じない方針。
20年末に新型コロナの影響に加えて急に関税などが発生するFTAなしの結論になれば、英・EU双方の経済に甚大な影響を与えるのは避けられない。