菅義偉官房長官は28日の会見でネットで飛び交うアベノマスクの納入業者選定疑惑について「国会議員や地方議員から個別の企業の取引を促すような口利きや紹介はなかったと聞いている」と釘を刺した。

 納入業者のうち、政府がこれまでなぜか、頑なに公表してこなかった最後の1社、福島県福島市の「ユースビオ」(樋山茂社長)の社名が明かされたのは27日。

 同社の名前が明かされて以降、樋山社長が有罪判決を過去に受けた疑惑、国会議員に政治献金をしたなど様々な噂がネット上で飛び交っている。本誌は28日夕、こうした疑問について樋山社長を直撃。約40分にわたって話を聞くことができた。

 再生可能エネルギー関連でベトナムなどで木質ペレットの輸出入に関わる仕事をしていたという「ユースビオ」社が、どんな経緯で国にマスクを納入することになったのか。樋山社長によると、偶然が重なった結果だったという。

「ベトナムの業者が『日本はマスクがなくて困っているか』と聞いてきて、送ってくれるというから待っていたら、サージカルマスクが4トン車一台分も来た。『いっぱいあったほうがいいだろ』と。どうしようかと思って福島県や同市、医師会や薬剤師会、知り合いの病院とかにあげたりしていた。そうこうするうち、県の方からマスク不足で困ったと、あんたら顔が広いから調達できないか、と言ってきた。『やってみましょう』と即答して交渉していると、そのうちに、『行政の分は国が一括で調達することになったので、経済産業省に話をシフトします』という話になった。それで経産省に行ったんです」

 樋山社長によると、ベトナムにはマスクをつくる工場が多数あり調達は容易だったという。経産省が望む布マスクについて、スペック表や検査成績表などの書類やサンプルとして作った十数種類のマスクなどを経産省、厚生労働省などで作られたマスクチームに提出したという。

「うちは輸入業者だから、マスクを作ってはいない。でも、現地で生産している業者には実績があったから、これだったら行けるでしょう、と発注をいただいたんです。随意契約という名前となっているが、うちは単価契約と聞いている。単価を決めて、どんどん入れてくれという契約でした。うちのマスクは1枚130円台と安いし、納品したものからは1枚たりとも不良品は出ていない。それでなんでこんなに騒がれなくてはいけないのか。4月の頭に不良品の問題が起きたときに、政府の担当者から名前を出していいかと聞かれ、『うちは関係ないから出していいですよ』とすぐにOKを出した。それなのに、うちの社名の公表が最後になった理由がわからない」

 ユースビオの社名が報道されてから取り沙汰されているのが、公明党の若松謙維参議院議員との関係だ。福島市のユースビオの事務所には若松議員のポスターが貼られており、2015年には樋山社長が若松議員に12万円の寄付をしていることが、政治資金収支報告書に記載されていた。

 このため、マスクの納品に若松議員の関与があるのではないか、という見方がネット上などを中心に広がった。この件について尋ねると、樋山社長はこう答えた。

「若松さんは議員になる前からの知り合い。僕は創価学会の3代目でもともと学会員だから、その関係で知り合いだった。いつからかは覚えていないけど、どこかの会合で会って、選挙に出るとき『手伝って』と言われて、行ったこともある。公明党は献金を要求しないが、寄付は個人として出した。癒着といっても、どう癒着するのか。県会議員や国会議員の関わりも言われていますが、彼らが僕が受注したと知ったのは、決まったときですから。事前に彼らにお願いします、と言ったわけじゃない。こういうビジネスは、彼らが入るよりも自分でやったほうが早いですから。公明党を除いて、安倍総理とか、麻生財務相とか、一切付き合いはないですよ」

 もう一つ、樋山社長について指摘されているのが過去の「脱税」問題だ。2年前の2018年6月、当時、電気通信機器修理業を営んでいた樋山社長は消費税法違反などの罪に問われ、福島地裁で懲役1年6月、執行猶予3年の判決を受けている。当時の報道によれば、従業員の給与を外注費と装い、約3200万円の消費税などの支払いを免れた、とされている。SNSなどで過去の記事がコピーされて広められたことで、様々な憶測を呼ぶ結果になっている。この件について尋ねたところ、樋山社長はこう説明した。

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https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200428-00000085-sasahi-soci&;p=1
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