自治会が自腹で全世帯に一律10万円交付「大切な財産を住民のために」
4/30(木) 6:00配信
https://news.yahoo.co.jp/articles/6e14579a03507ee9341c67c2bda2e34dd976841d

 新型コロナウイルス感染症が拡大する中、兵庫県姫路市夢前町神種(このくさ)の神種自治会が29日、会員の全104世帯に「臨時分配金」として一律10万円を交付した。感染予防のため地域のイベントが中止になり、「住民を元気づけたい」と半世紀以上前からある自治会の貯蓄を取り崩したという。(小川 晶)

 田渕憲三会長(73)によると、25日の臨時役員会で分配案を協議した。本来ならば、会員全員が参加できる臨時総会を開きたかったが、「3密」の恐れがあるため断念。その代わりに、反対の意見を丁寧にすくい上げるよう申し合わせた。

 「住民にとって、有効なお金の使い方だと思う」「1人10万円の国の『特別定額給付金』はいつ受け取れるか分からないが、自治会のお金ならすぐに配れる」。役員ら13人の話し合いでは、目立った反論も出ず、交付を決めた。

 総額1040万円の原資には、自治会の貯蓄の一部を充てた。1970年代ごろまで、地元の山に生えるスギやヒノキを切り出して売却益を得ており、緊急時の備えとして積み立てていたという。近年の大きな出費は十数年前の屋台蔵建設ぐらいにとどまり、十分に残っていたことも幸いした。

 29日午前から、役員が手分けして各世帯を訪れ、封筒に入った10万円と趣旨を説明する書面を手渡した。受け取った南正子さん(66)は「まさか自治会からお金がもらえるとは思わなかった」と驚いた表情。「学校園の休みが続き、孫3人の面倒を見るのが大変。食費などに大切に使いたい」と感謝した。

 長年にわたって蓄えてきた財産の分配に、ためらいもあったという田渕会長。「100年に1度ともいわれる有事だからこそ、大切な財産を住民のために使うことにした。10万円という額面以上の意義があると思っている」と話した。