岐阜市寺田の路上で3月25日、ホームレスの無職渡邉哲哉さん=当時(81)=が襲われ死亡した事件は、県内の19歳の少年5人が傷害致死や殺人の容疑で
逮捕されてから30日で1週間となる。少年の一部は殺意を否認しているが、事件当日は逃げる渡邉さんを執拗(しつよう)に追い掛け、暴行に及んだ疑いも浮かんでいる。
石を投げる嫌がらせ行為は、なぜ命を奪う凶行に発展したのか。県警は経緯を慎重に調べている。

 殺人の疑いで逮捕されたのは、安八郡安八町の会社員少年、大垣市の無職少年、瑞穂市の無職少年。傷害致死の疑いで逮捕されたのは、瑞穂市の少年、山県市の少年。
県警は防犯カメラの画像解析など捜査を進め、少年たちを特定した。

 県警によると5人は3月25日未明、同市河渡の河渡橋の下にいた渡邉さんらに石を投げ、うち3人が逃げる渡邉さんを同市寺田の路上まで約900メートルにわたって 
追い掛け、頭部に強い打撃を加えた。

 渡邉さんらは3月中旬以降、事件当日のほかに4回ほど石を投げられる被害に遭い、岐阜北署に相談していた。投石には少年5人を含む男女10人ほどが関わっていたとされる。

 捜査関係者によると、調べに対し会社員少年は「殺すつもりはなかった」と殺意を否認。一部の少年は事件後、周囲に「土の塊を投げたら顔に当たった。
(渡邉さんは)弾みで後ろに倒れた。頭から血が出ていた」と話している。県警は少年たちが渡邉さんに致命傷を負わせた経緯や暴行の具体的な方法を調べている。

 事件はインターネット上でも大きな反響を呼んでいる一方、容疑者の少年たちに関するデマなどが多数拡散している。

 5人のうち4人が同じ大学の硬式野球部の元部員や現役部員だったことから、逮捕された少年とは別人にもかかわらず同部の部員を名指しして犯人視するデマが、
ツイッターやまとめサイトで拡散している。デマの被害を受けている部員の一人の元には脅迫メールが届いた。本人が精神的に追い詰められていることから
28日、中学時代に所属していたクラブチームが「彼は事件には一切関与していない」と声明を出した。

 少年たちの投石のきっかけについて「猫に石を投げて虐待していたことを注意され、渡邉さんを標的にするようになった」とする出どころが不明な情報も広まっている。

 渡邉さんと橋の下で暮らし、事件当日に少年たちから攻撃を受けた女性(68)は「猫に石を投げていたところは見ていないし、渡邉さんからも聞いたことがない」と話す。
渡邉さんが世話をしていた4匹の猫は現在も元気に暮らしている。

 捜査幹部の一人も「そんな話は全く聞いたことがない」と否定する。

岐阜新聞Web
https://www.gifu-np.co.jp/news/20200430/20200430-236678.html