<コロナ緊急事態>「家賃、支払い、給料…閉められない」 店名公表の古河・パチンコ店 他県ナンバーちらほら

県が新型コロナウイルス特別措置法に基づき、休業の協力要請に応じなかった古河市のパチンコ店名を公表してから一夜明けた二十九日、この店は通常通りの営業を続けた。駐車場には、埼玉県や千葉県など県外ナンバーの車もちらほら。近隣の住民が不安のまなざしを向ける一方、店側は「家賃や取引業者への支払い、従業員の生活を考えれば閉められない」と台所事情を打ち明けた。
 午前九時の開店前に訪れた客は、車約四十台と自転車五台ほど。店が開くまで、車外でたばこを吸ったり、車中でスマホを眺めたりして時間をつぶしていた。
 車のナンバーは、県内の「つくば」「土浦」や市に隣接する「とちぎ」「熊谷」「春日部」が多いが、中には離れている「大宮」「足立」「千葉」「横浜」なども。正午ごろには、三百台以上止められる駐車場の七割近くが埋まっていた。
 「春日部」ナンバーの車で来た三十代の男性は「この店はちゃんと台を消毒しているし、感染の心配はしていない」。古河市内の男性(46)は、県外からの来客について「たまたま他県の店が閉まって、茨城の店が開いているだけ。逆の立場だったら、こっちが他県の店に行くわけだから」と、気に留めていなかった。
 この店の周辺が散歩コースという近所の女性(72)は「そこまでしてパチンコをやりたいのか。店も(要請に)協力してあげればいいのに」と苦々しい表情を浮かべ、「感染が怖いから近づかないようにしている」と声を潜めた。
 男性店長(39)は「地域の方々の心配はよく分かるが、金融機関への返済やスタッフの給料支払いを遅らせるわけにいかない」と話し、苦渋の判断であることを強調。別の男性従業員は「休業させるなら『要請』ではなく、一律に強制でやってほしい。どれだけ補償や融資を受けられるか分からなければ、会社としても休業に踏み切れないと思う」と訴えた。(宮尾幹成)

2020年4月30日
https://www.tokyo-np.co.jp/article/ibaraki/list/202004/CK2020043002000134.html