いざ着いてみると、想像もしなかった状況に愕然とした。報道では、一人ずつ体温計、パルスオキシメーター、タオルほか一式の入った袋を渡される様子が紹介されていた。しかし、ユミさんの場合は違った。

「渡されたのは、ルームキー、マスク、体温計、ボールペン、宿泊にあたっての注意事項、手洗いの仕方や咳エチケット・マスクの着用方法について書かれた紙、体温観察表。これだけです」

パルスオキシメーターは今や多くの人が知っている、コロナ患者の経過観察に有効と言われる機器だ。血中の酸素飽和度や脈拍を手軽に測ることができ、肺炎症状の有無や悪化を予測できる。容体急変のリスクを少しでも減らすためにも、毎日の血中酸素濃度のモニタリングが望ましいとされるが、そのパルスオキシメーターは用意されていなかった。

最も不安をかき立てられたのは、医師の姿が全く見えないことだ。

「病院から移る時には、ホテルにはお医者さんがいると言われたんです。『何か急変があれば、相談してください』と。具合が悪くなったときの連絡先は『事務局』と言われる内線番号。この事務局の人が保健所の人なのか、看護師資格のある人なのかわからないんです。体調が悪くなり、電話をかけると、そのあと看護師のような人から、一応、折り返し電話はかかってきます。でも、やっぱり不安です」(ユミさん)

厚生労働省が各都道府県に配った、宿泊療養施設への医療班配置に関するマニュアルには、日中は保健師か看護師のみの常駐で、医師の常駐は求めておらず、オンコール(=緊急時の対応役を待機させる)以上での対応と書かれている。

ユミさんは同じホテルの宿泊療養の仲間から聞いて、さらに驚いたことがある。

「私たちは、“患者”ではなく、“療養者”というカテゴリーだから、事務局からは私たちに対して、『診療行為は一切できない』と告げられたと。急変したら病院へ、となっているけれども、多分、病院のベッドは空いていない。ホテルで急変したら、いったいどうなるのでしょうか」

事務局の受け付け時間は、9時から21時まで。緊急なら夜中でも電話をかけられるが、それでも不安は拭えない。医師の回診などはなく、毎日朝と夕方に体温を測り、内線で事務局に結果を口頭で伝えるだけ。医療従事者と思われる人が行うPCR検査は、毎日昼にロビーで皆と一緒に並んで受けるが、その時も、体調について聞かれることはないという。

厚生労働省に今後、医師の常駐はありうるのかを確認したところ、不安の声は把握しており、「現在、そうした要望も含め検討中」(新型コロナウイルス感染症対策推進本部)という。

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https://www.businessinsider.jp/post-211965
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