フランス政府は2日の閣議で、3月に発令された「公衆衛生の非常事態」の2カ月延長を決めた。この制度は、新型コロナウイルス対策で、経済対策や外出制限で政府の迅速な措置を可能にするため新設されたもので、憲法で明記されない「強権行使」だが、世論の支持は高い。

 「公衆衛生の非常事態」法は3月23日に公布された。「国民の生命を危機にさらす惨事」への対応が目的で、適用は今月末が期限だった。ベラン保健相は2日、国会への延長法案提出を発表し、「法案では新たに感染者の強制隔離についても定めた」と述べた。

 11日に予定される封鎖緩和後、感染再発を防ぐため、当局の隔離命令の拘束力を強める狙いがある。

 新型コロナ対策で政府は3月半ばまでにマスクの徴用、必需品以外の商店・飲食店の閉鎖、外出禁止を相次いで政令で定めた。続いて成立した「公衆衛生の非常事態」法は、違反者に最高1万ユーロ(約120万円)と禁錮6月の処罰を明記。国会審議を経ず、政府が決められる措置を広げた。

 モデルとなったのは、1955年の非常事態法。この時は、旧植民地アルジェリア紛争で「公共秩序への攻撃」という危機に対応したもので、2つの法は期間設定や手段で大きく異なる。憲法は国防に関する戒厳令を定めるが、非常事態には言及がない。

 このため、法と人権を審議する首相直轄機関「国家人権諮問委員会」は4月28日、政府の延長決定を前に「脅威の定義があいまい」などと異例の懸念を表明。だが、4月の世論調査では81%が「衛生上の危機対応には強い行政権が必要だ」と答え、「民主主義より効率を重視」する人も44%いた。「非常事態」への批判はほとんど出ていない。

ソース https://www.sankei.com/world/news/200503/wor2005030009-n1.html