新型コロナウイルス感染が20歳未満にも広がる中、厚生労働省が「37・5度以上の発熱が4日以上続く」とする新型コロナの相談や受診の目安に対し、保護者に戸惑いが広がっている。子どもの場合、風邪などの症状と見分けがつきにくいためで、福岡地区小児科医会の黒川美知子会長は「子どもは4日も待てば別の重大な疾患が見逃される恐れがある。受診をためらわないで」と医療機関への電話連絡を呼び掛けている。

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 一般的な厚労省の目安では「発熱4日以上」「強いだるさや息苦しさがある」といった症状がある場合、まず帰国者・接触者相談センターに連絡し、薦められた医療機関を受診するという手順を示す。だが、日本小児科学会は、この目安は子どもの風邪の症状の多くが該当してしまうため、「実際的ではない」と否定的。ネット上でも「幼児は体力的に4日も待てない」といった書き込みがあふれる。

 こうした指摘が相次いだことを受け、厚労省は子ども受診に関する考え方をまとめ、5月1日付で都道府県などに通知。「子どもは相談の目安にかかわらず、診療を必要とすることがあるので、速やかにかかりつけ医療機関に電話で相談を」と方針を明確にした。担当者は「目安は当初から変わっていないが『37・5度以上4日』が独り歩きしてしまった」と釈明する。

 自宅での様子見を求められる親にとっては気が気でない。「何でもいいから早く病名が知りたかった」。福岡市の30代女性は2歳の息子に40度近い発熱が5日続いたが、最後まで明確な診断結果は出なかった。

 PCR検査へのハードルも高く、発熱4日目に連絡した帰国者・接触者相談センターの職員からは「こちらから専門外来にPCR検査を頼んでも、子どもの場合は『不要』と突き返されるケースばかりで」とやんわり断られた。

 6日目に受診できた大病院での診断結果は「恐らく気管支炎」。女性は「何も手に付かなかった。自分に症状はないけど、コロナではないと確信できないし」と今も不安は拭えない。

 厚労省の統計では、1日時点の全国の感染者のうち10代以下は575人で全体の4・0%。福岡県内の10代、10歳未満の感染者は3月は各1人だったのに対し、4月の新規感染者はそれぞれ17人、13人(30日時点)と増加している。日本小児科学会によると、子どもの感染率は成人に比べて低く、無症状や軽症が多い。

 全国では保育園での集団感染の事例があるが、子どもは感染した親などからうつったケースがほとんどだ。黒川会長は「子どもを守るためには、周囲の大人がかからないように注意することが大切」としている。 (前田倫之)
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