新型コロナウイルスの患者が重症化するメカニズムが最近の研究で明らかになってきた。
生命を脅かす重い肺炎は、自分を守るはずの免疫が過剰に働くことで起きている可能性が判明した。

ウイルスは全身の臓器に侵入してさまざまな症状を引き起こすとみられ、
詳しく解明できれば治療法の開発につながると期待される。

「肺炎を起こしても軽い症状で治る場合もあるが、重篤化する人もいる。病気の仕組みがよく分かっておらず、
どの人が重くなるか見極められない」

愛知医科大の森島恒雄客員教授(感染症内科学)は、治療の難しさをこう話す。
悪化する場合は非常に急激で、人工呼吸器や人工心肺装置(ECMO)がこれほど高い比率で必要になる病気はないという。

なぜ致死的な肺炎に至るのか。量子科学技術研究開発機構理事長で免疫学が専門の平野俊夫氏らは、
免疫がウイルスを打ち負かそうとするあまり過剰に働き、いわば暴走して炎症が広がり重篤化する可能性を突き止めた。

免疫の働きを高める「インターロイキン(IL)6」というタンパク質が体内で過剰に分泌されると、
免疫細胞はウイルスに感染した細胞だけでなく、正常な細胞も攻撃してしまう。

死亡した患者はIL6の血中濃度が顕著に上昇していたとの報告もあり、重篤化の一因として指標に使える可能性がある。

感染初期は免疫力を高める必要があるが、重篤化すると逆に免疫を抑える治療が必要になるとみられる。
そこで有望視されるのが、中外製薬のIL6阻害薬「アクテムラ」だ。

関節リウマチなどに使う薬で、同社は新型コロナ向けに治験を行う。
平野氏は「新型コロナは免疫の暴走を抑えられれば怖くない病気だと思う。治験が効果的に進むことを期待している」と話す。
https://www.sankei.com/life/news/200503/lif2005030074-n1.html
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