マスク転売で300万円稼いだ男。批判の声にも動じず…
「俺ひとり助かればいい」という言葉も印象的だった

新型コロナウイルスの拡大を発端にはじまったマスク狂想曲。マスクを求めた大行列に政府のマスク2枚配布に不良品問題まで、日本はマスクに踊らされたと言っても過言ではないだろう。そもそも騒動の始まりは“マスクの転売”ではなかろうか。最近では、50枚3500円程度で販売する“露天商”も現れ始めている。

彼らはどういう経緯で、マスクで一儲けしようと考えたのか。今回はマスク転売で300万円近くを売り上げた有田博人さん(仮名・44歳)に話を聞いた。

本業が傾いたから、転売で稼ぐしかない

経営が思わしくなかったホテルも、ビザの緩和やLCCの増加により中国人観光客が団体で押し寄せるようになり、経営も上向くように。そんな彼らが、2020年1月に入ると「土産にしたい」とマスクを探し求めるようになったという。

「さらにテレビでも『中国でマスク不足』というニュースを目にし、これは転売のチャンスだと興奮したのを覚えています。さっそく上司に許可を取り、業者からマスクを一枚4円で購入するとフロントに並べました。中国人観光客に50枚入り一箱800円で販売すると、おもしろいように売れた。中国語でポップをつけたところ、あっという間に100箱が売り切れました。責任者がいない日は、レジを通さずに現金を受け取り、そのままポケットにねじ込んじゃいましたね(苦笑)」

すぐに業者を呼び「現金で買うからもっと売ってくれ」と虎の子の30万円を握らせ、買えるだけ買いこんだ。自室を倉庫代わりにしようと寮に納入させると、6畳のワンルームはあっという間に段ボール箱で埋まった。

「コロナの影響がここまで大きくなるなんて、当時は予想していませんでした。仕事の合間にオークションサイトとフリマアプリを調査し、売り時を探りました。春節の頃には翌月以降のキャンセルが相次いでいて、うちのホテルもいよいよ……という状況に。転売で利益を得て生活資金を稼ごうと決心を固めました。

試しにオークションサイトへ出品したところ、1時間で70万円近く売り上げました。マネージャーからは『こんなときこそ仕事を頑張って』と注意されましたが、退職金がもらえるかもわからないのに、やる気が出るわけがない。仕事をサボりどんどん仕入れて、どんどん売りさばきました」

高額でも買う人がいるのが悪い

2020年2月になると、マスクの高額転売に対して、SNSを中心に批判の声が広がったが、有田さんは気にも留めない。

「モノの価格は需給で決まる。法外な値段でも買う客がマスクの値段を釣り上げていたのでは? それに、お金儲けのチャンスが目の前に転がっているのに、取りにいかないほうがおかしいですよ。買うのは老人が多いですね。老人は貯金も多いんでしょ? お金が余っているから、高くても買うんですよ。俺が経済を回してやっているんです」

フリマアプリ各社が高額出品に対して設定価格を引き下げるなど自主規制を強化し、3月上旬には高額出品を削除し始めたが、有田さんはこれまでにマスク転売だけで300万円超を売り上げていた。3月15日、マスクの高額転売が政令で禁止されフリマアプリ、オークションサイトからマスクの出品が消えた。違反は「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」が科される厳しい内容だが、有田さんの顔に焦りの色はない。

「これまで稼いだお金は自分の老後資金にもできます。オークション運営会社は手数料を儲け、客はマスクが手に入った。まさに『三方よし』でしょう。今後、マスクがダメなら、ほかのもので儲ければいいだけ。消毒用のアルコールジェルも大量に仕入れていたので、今はそちらにシフトしています。

法令施行後も通販サイトでは相変わらず高値で販売されていますが、転売とそうでないものは、どうやって区別しているんですかね? 給料は1か月も未払いだし、寮も出なければならない。今、本当にお金が必要なんです。まだまだ稼いで、退職金にするつもりです」

コロナで仕事を失う人が世界中に続出している。有田さんのように自暴自棄になり、不法行為に手を染めてしまう人もいるだろう。これも心の貧困の弊害だが、決して同情してはいけない。

5/3(日) 8:54配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20200503-01663351-sspa-soci&;p=1