5/7(木) 14:57配信
河北新報

樹木が伐採されて建物まで見通せるようになった宮城県循環器・呼吸器病センター跡地=4月下旬、宮城県栗原市瀬峰

 宮城県栗原市瀬峰の丘陵地にある宮城県循環器・呼吸器病センター跡地が、2カ月ではげ山に一変した。土地を借りた医療法人が、県から保存を求められていた樹木を含めて伐採した。憩いの場として長年親しんできた自然が失われ、住民からは保水機能低下による水害を不安視する声も上がる。

【写真】紅葉した街路樹が並ぶセンターの敷地=2018年11月

 跡地は約6.7ヘクタール。瀬峰地区を一望できる高台にある。伐採は道路沿いのイチョウやソメイヨシノなど、確認できただけで大小約350本に上る。中には記念樹もあった。

 樹木は施設完成2年後の1954年ごろから植えられたという。植樹した市内の元看護師の女性(85)は「同僚と花見をした。昔の面影がなくなり寂しい」と嘆く。

 水害を懸念する声も上がる。2019年秋の台風19号豪雨では、地元のJR瀬峰駅周辺などで86戸が浸水被害に遭った。辛うじて自宅の浸水を免れたという瀬峰地区の男性(77)は「近年は豪雨災害が多い。治水への影響はないのだろうか」と不安げだ。

 センターは県の県北医療体制の再編に伴って19年3月に閉鎖された。八戸市の医療法人「仁泉会」が跡地を無償で借り受け、老人保健施設の9月開所に向けて準備を進めている。伐採は2〜4月に行った。

 県は契約前、仁泉会に記念樹などは残すよう求めた。県医療政策課の担当者は「伐採は寝耳に水。状況を確認したい」と驚く。

 仁泉会によると、伐採した中には県に保存を求められた記念樹などが60本含まれていた。担当者は「組織内の引き継ぎが不十分だった」と説明する。

 センター跡地利用の検討会を設置して提言をまとめるなど、地区住民の関心も高かった。元行政区長の後藤哲弘さん(72)は「瀬峰地区が水害に悩まされてきたことを知らなかったのではないか。伐採前に地元に相談してほしかった」と指摘する。

 仁泉会の現地準備室の浅野雅博室長は「地元住民との情報共有が少なかった。認識を改めたい」と釈明する。

(この記事は「読者とともに 特別報道室」に寄せられた情報を基に取材しました)

https://news.yahoo.co.jp/articles/48d6f6356135d3879c2c6d646cfffdab20267949