【上海=白山泉】二十四年前に中国甘粛省で人を殺害し、全国各地を逃げ続けていた男(48)が今月に入って浙江省杭州市の警察署に出頭した。携帯電話を持っていなかったことから、政府が新型コロナの予防対策として導入を進める「健康QRコード」を提示できず、ホテルや小売店などを利用できなくなった。

 健康QRコードは、身分証や携帯番号の個人情報を基に感染地域への渡航歴や感染者との接触歴などから感染リスクを割り出すスマホの機能。ホテルや店を利用するには、低リスクを意味する「緑」のコードを示す必要がある。

 杭州日報によると、男は甘粛省の出身で、一九九六年に同郷の人といさかいを起こし殺害。警察の捜査を逃れるため身分証も携帯電話も持たず、日雇い労働をしながら全国各地を歩き回り、物を買うときには現金で支払っていた。

 今月一日に浙江省温州市から同省内の杭州市へ移動したが、同市は健康QRコードを開発したIT大手アリババの本社があり、宿泊や買い物のほか、仕事に就くにも健康QRコードの提示が必要。スマホを持たない男は路頭に迷い、警察に出頭したという。

2020年5月9日 朝刊
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