新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が延長されてから初の週末となった9日。関西では休業要請が緩和された一部の地域で美術館などが再開され、心待ちにしていた美術ファンらが足を運んだ。公園や繁華街にも少しずつ人出が戻り始めたが、飲食店の関係者からは「にぎわいにはほど遠い」との声も上がった。
大阪市東住吉区の長居公園ではこの日朝から、多くの家族連れやランナーらが集まった。感染拡大防止のため、大型連休中は公園の駐車場が閉鎖されていたが、7日以降は利用できるようになっていた。
「密集を避けるようにして走っています」。趣味のランニングで訪れた女性会社員(59)はTシャツの生地で作ったというマスクを着け、流れる汗をぬぐった。「暑くなってきたので、マスクはつらい。感染防止のため、ランナー仲間で集まれないのも寂しい」とため息をついた。
子供3人と訪れた近くの女性(39)は「毎日、子供と公園を1周することで生活のリズムをつくっている」と話す。勤め先の歯科医院は仕事が減り、子供と家で過ごす日々が続いているといい、「早く緊急事態宣言が解除になってくれるとうれしい」と期待した。
一方、「感染者がこのまま減っていく見込みもないし宣言の延長は仕方がない」と話すのは住吉区の農業の男性(41)。この日は仕事が休みで小3の長男(8)と体を動かしに来た。「マスクをして、防じん眼鏡もかけている。平日も子供はあまり家の外に出せてないです」。長男は「友達と会えないのはさみしい」と漏らした。
大阪・ミナミの繁華街、道頓堀周辺。感染が広がる前は多くの若者や観光客でにぎわっていたが、この日人影はまばらで、たこ焼き店の多くには「臨時休業」と書かれた紙が張られ、シャッターが下りていた。
ドラッグストアにマスクを買いに来たというフリーターの男性(57)は「先月と比べると少し人が増えたように感じるが、街の雰囲気はまだまださみしい」と話す。
緊急事態宣言後も営業を続けているタイ料理店の男性店長(44)も「連休が明けても、お客さんは少ないままだ」と肩を落とす。ただ、この日は約1カ月ぶりにディナーの予約が入ったといい、今後に期待を寄せる。「先が全く見えなかった数週間前に比べると、少しずつ希望が見えてきた。感染拡大が終息し、かつてのにぎわいが戻ってほしい」
「かに道楽道頓堀本店」は7日から時間短縮で営業を再開。9日も午前11時から、カニの形をした大型看板が動き始めた。小林泰三店長は「感染者数は減少傾向にあり、治療薬も承認されるなど、状況はいい方向に動いていると感じる。客足はまだ少なく楽観はできないが、宣言解除に向かって進んでほしい」と期待する。
一方、和歌山県は7日から美術館など一部の施設について、県外客には自粛を求めるとの条件付きで休業要請の対象から外した。和歌山市の県立近代美術館や県立博物館では9日、再開から初の週末を迎えた。
美術館の受付には、間仕切り用のアクリル板や消毒液が設置され、係員が来場者に県内在住者かどうかを確認していた。訪れた和歌山県橋本市の男性会社員(68)は「企画展を楽しみに来た。館内の感染症対策は厳重にしているようなので安心してゆっくり見たい」と笑顔で話した。同美術館の花田真秀総務課長(45)は「人の入りはまだ少ないが、せっかく準備をした企画展なので多くの人に来てもらいたい。ただ、密集になっても困るので複雑な気持ちだ」と話した。【田畠広景、澤俊太郎、後藤奈緒】
ソース(2020年5月9日 12時02分)
https://mainichi.jp/articles/20200509/k00/00m/040/092000c