オフィス街やイベント会場で見掛けるキッチンカーが住宅街に登場している。新型コロナウイルスの感染拡大で店舗の営業自粛が続く中、密閉、密集、密接の「3密」を避けながら温かいプロの料理を食べられるとあって、在宅勤務中の人や臨時休校で子供と過ごす家族などにひそかな人気だ。
「夜の街」恐る恐る営業再開 休業要請解除も客足まばら

 東京や大阪などの都市部に車両を派遣するキッチンカー事業協同組合(東京)の高橋宏一理事によると、相次ぐイベント自粛や在宅勤務によるオフィス街での人出減少で、3月以降の売り上げはほぼゼロになった。同組合では4月7日から業務を自粛している。
 一方、住宅街では逆の現象が生じている。4月下旬のお昼時、東京都中央区のタワーマンションの前では、カレーライスや焼き肉丼などを売るキッチンカーが7台並び、親子連れなどが1メートルほど間隔を空けて列をつくる姿が見られた。
住宅街に登場したキッチンカーに並ぶ住民ら=4月18日、岐阜県各務原市
住宅街に登場したキッチンカーに並ぶ住民ら=4月18日、岐阜県各務原市

 このうち3台を派遣したメロウ(東京)によると、この日は1台で平均110食程度を準備し、いずれも午後2時すぎには完売した。チキンの丸焼きを販売した男性(40)は「客数は少ないが、家族連れが多いので1羽まるまる買っていく方もいる。反響がここまでとは」と驚く。
 在宅勤務中の中央区の会社員高田清仁さん(34)は「どれを食べようかと悩む楽しみは、気分転換になる。最近はこういう感覚がなかった」と笑顔。夫と2歳の娘と暮らす主婦(42)は「3食とも作るのは大変。ランチだけでも手抜きがしたい」と助かっている様子だった。
 こうした需要は、地方にも広がり始めている。岐阜県各務原市の住宅街では4月中旬の週末、雨天にもかかわらず、午前11時半の開店前から2台のキッチンカーに5人の客が並んだ。企画したメルカート(同市)の森智彦代表取締役は「新型コロナでキッチンカーの行き先がなくなったが、住宅街での反応は上々」と手応えを感じている様子。「どこまで長引くか分からないが、今後もやっていける形を探していきたい」と話した。

2020年05月11日13時36分
ソース https://www.jiji.com/jc/article?k=2020051100065
画像 https://www.jiji.com/news2/kiji_photos/202005/20200511at01S_p.jpg